2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Heavy Group-14 Element Unsaturated Clusters That Contain an Unsual Geometry
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17H03015
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩本 武明 東北大学, 理学研究科, 教授 (70302081)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不飽和ケイ素クラスター / ケイ素 / π結合 / 反転結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
反転した立体配置の二重結合を持つ不飽和ケイ素クラスターであるテトラシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン(1)とジアリールジスルフィドとの反応で、1の橋頭位ケイ素上にアリールチオ基が置換したテトラシラビシクロ[1.1.0]ブタン(2)が生成することを見出した。この結果は化合物1の橋頭位ケイ素間に二重結合性があることを示している。生成した化合物2のX線単結晶構造解析の結果、2の橋頭位ケイ素周りの構造は大きく外側にピラミッド化しており、この橋頭位間には反転した単結合があることを見出した。また、この化合物は熱的に不安定であり、チオアリール基が転位した多環式構造を持つ異性体を与えることを見出した。このような異性化は従来のテトラシラビシクロ[1.1.0]ブタンには見られない特異な反応である。 また、不飽和ケイ素クラスター1と四塩化炭素との反応を低温で行うと、橋頭位にクロロ基が置換したテトラシラビシクロ[1.1.0]ブタン(3)が生成することを見出した。X線結晶構造解析の結果、化合物3の中心の4つのケイ素原子と2つの塩素原子が同一平面上にある構造をとることを明らかにした。また橋頭位間距離は2.58オングストロームであり、通常のケイ素-ケイ素単結合(およそ2.34オングストローム)よりも著しく長かった。量子化学計算の結果、化合物3の橋頭位にはπ型の結合性軌道があること、架橋ケイ素上の嵩高い立体保護基がこの構造に重要な役割を果たしていることを突き止めた。通常π結合は多重結合の中に見られ、より強いσ結合により支えられているが、2のπ結合はそのようなσ結合のない非古典的なπ結合である点で注目に値する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反転した二重結合を持つケイ素クラスターの反応性の解明は順調に進んでいる。予期していなかった新しい反応性や全く新しい構造を持つ化合物の生成も見出している。さらに新しい展開が可能な化合物3の生成を見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
合成された橋頭位にクロロ基を持つテトラシラビシクロブタン3は、π結合性の高い結合を橋頭位に持っている。これはクロロ基の置換基効果によるものかどうかを確かめるために、他のハロゲン付加についても追究する。また、3は求核剤との反応で橋頭位に様々なπ電子系を導入した化合物を合成し、橋頭位間π結合のπ共役に関する知見を得たい。
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Research Products
(6 results)