2018 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸域諸施設における技術的検討のパラダイムシフトを目的とした波浪に関する基礎研究
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17H03315
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
橋本 典明 九州大学, 工学研究院, 教授 (90371749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 浩二 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長 (50371753)
平山 克也 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長 (60371754)
藤木 峻 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (10735004)
伴野 雅之 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 主任研究官 (80549204)
山城 賢 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70336014)
横田 雅紀 九州産業大学, 建築都市工学部, 講師 (60432861)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 方向スペクトル / 海洋波 / 風波 / うねり / 海岸工学 / 港湾工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は平成29年度の成果に基づき,1)高精度でより実用的な方向スペクトル推定法の開発・改良,2)方向スペクトルを風波成分とうねり成分に,あるいは特性の異なるうねりを各成分に分離する方法の開発・改良,3)我が国沿岸域の方向スペクトルの各成分の出現特性の検討,の3項目を検討した. 1)では,平成29年度にベイズ法および拡張最大エントロピー法の計算法の安定性の向上に向けた改良が必要であることが示唆されたため,準ニュートン法を利用した解析法を検討した.また,ドップラー式海象計により計測された観測データから方向スペクトルを推定する際に利用する水位変動と流速変動との伝達関数を改良した.これらにより,推定精度と安定性の向上を図るとともに計算速度の向上を図った. 2)では,方向スペクトルのPartitioning処理で一般に用いられているWITS (Wave Identification and Tracking System)の問題点を解消可能な方法として,Mixtureを利用したPartitioning手法を提案し,Mixtureを用いることで波浪スペクトルの力学的構造を考慮した処理に加えて,ピーク数選択の自動化が可能となることを示した.また,WITSよりも立体的なPartitioningを行うことが可能なMixtureの方が精度が高いことを確認した. 3)では,波浪モデルで推算された方向スペクトルを用いて,太平洋沿岸におけるうねりの出現特性と発生源の解析を実施し,減衰距離が短いうねりは台風や低気圧による南東寄りの波向,長いうねりは北太平洋北部から伝搬する北東寄りの波向の出現が卓越することを示した.また,うねりをWave System Tracking により追跡し,うねりが南太平洋や貿易風帯から我が国の太平洋沿岸まで伝搬する解析結果を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した内容はほぼ予定通りに進捗し,平成30年度の目標をほぼ達成した.しかし,方向スペクトル解析法の開発・改良では,推定値の安定性は向上したものの,方向スペクトルのピーク値が従来の計算法に比べて先鋭な形状で推定される傾向があることから,その妥当性について更なる検討が必要であることが示唆された. Mixtureを利用した方向スペクトルのPartitioning手法については,低気圧や台風が沖合を移動する際に観測される歪んだ方向スペクトルを必ずしも正確に表現できないことから更なる検討が必要であることが示唆された. また,波浪推算結果を用いてPartitioningによりうねりの解析を行ったが,現状では,うねりの推算精度は風波と比較して低く,うねりが海洋構造物の設計や海洋での活動に与える影響の重要性を勘案すると,さらなる精度の向上が示唆された こららの幾つかの問題点は平成31年度にも再検討予定であり,問題解決に向けた具体的な成果が得られる見込みもあることから,概ね達成したものと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,平成30年度に実施した研究成果に基づき,方向スペクトル推定値,方向スペクトル成分値および成分毎のパラメータを用い,我が国沿岸の方向スペクトルの出現特性を検討する.ここでは,方向スペクトルのみならず風波,うねりあるいはそれらが重合した波浪場の状況について海域毎の波候を詳細に検討する.また,NOWPHAS波浪観測台帳および天気図等の気象情報を基に,各海域で発生した気象擾乱期間の方向スペクトル推定値,方向スペクトル成分値,成分パラメータを詳細に検討し,気象擾乱時の波浪の出現特性の解明を行う. 方向スペクトル情報の実務への導入に向けた検討では,港内静穏度解析および越波遡上解析などを対象として,本研究で得られた知見に基づく波浪諸元を入力条件とした計算を行い,従来用いられてきた波浪諸元を入力条件とする計算結果との差異を検討する. これらの検討を総合的に評価し,沿岸域諸施設の計画・設計・施工等の様々な段階・場面で,既往の波浪諸元に代わる合理的で分かりやすく便利な波浪指標を検討する.
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Research Products
(9 results)