2017 Fiscal Year Annual Research Report
磁性金属-強誘電体ナノ複相構造薄膜の作製による新複機能物性材料の開発
Project/Area Number |
17H03385
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
増本 博 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 教授 (50209459)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 伸聖 公益財団法人電磁材料研究所, 研究開発事業部, 主席研究員 (70205475)
青木 英恵 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60733920)
池田 賢司 公益財団法人電磁材料研究所, 研究開発事業部, 主任研究員 (40769569)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ナノ複相構造薄膜 / 新機能物性材料 / 磁性金属 / 誘電体 / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
誘電セラミックス中にナノ磁性金属粒子を分散させた磁性体-誘電体ナノ複相構造薄膜が、新しい原理に基づく磁気誘電効果と磁気光学効果を発現することを申請者グループにより発見し、トンネル型磁気誘電(TMD)効果およびトンネル型磁気光学(TMO)効果と命名した。初年度は、この研究をさらに発展させ、①より変換効率の高いTMD・TMO効果を発現する材料の開発を行うとともに、②新しい機能発現(従来の40倍もの巨大ファラデー効果を示す薄膜材料の開発)に成功し、英国科学誌「Scientific Reports」(3月21日付)に掲載された。 具体的には、①マトリックスにMgF2(-1124 kJ/mol)と同じくⅡa族元素のフッ化物であり生成熱が大きくナノ複相構造の生成が期待できるSrF2(-1218kJ/mol)を用いて、Co-Sr-Fナノ複相薄膜をco-sputtering methodにより作製し、成膜装置の改良と、グラニュラーの合金組成の検討を行うことにより、TMD効果の最大値、6.2%を得ることに成功した。また②粒径が数ナノメートルの鉄-コバルト合金微粒子(グラニュール)が、フッ化アルミニウムやフッ化イットリウムなどのフッ化物誘電体から成る媒質(マトリックス)中に分散した磁性体-誘電体ナノ複相構造薄膜において新しく開発した材料は、光通信に用いられる波長(1550nm)の光に対して、実用材料であるビスマス鉄ガーネットの約40倍もの巨大なファラデー効果を示した。本効果は磁性ナノグラニュールと誘電体マトリックスの界面において、原子の磁気モーメントが増大することにより発現することを明らかにした。 上記の結果が認められ、日本セラミックス協会第30回秋季シンポジウム優秀賞、および日本金属学会秋期講演大会優秀ポスター賞、および日本セラミックス協会東北北海道支部研究発表会優勝発表賞を受賞した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究グループは、磁性体-誘電体ナノ複相構造薄膜によって、「トンネル磁気誘電(Tunneling Magneto-Dielectric:TMR)効果」(磁場を印加すると材料の誘電率が磁場の強さに応じて変化する現象。室温で動作する。本研究グループで命名)および「トンネル磁気光学(Tunneling Magneto-Optic:TMO)効果」(磁場を印加すると材料の透過率が磁場の強さに応じて変化する現象。室温で動作する。本研究グループで命名)をそれぞれ平成26年度および平成28年度に発見したが、今年度、新たにBi-YIGに比して巨大なファラデー回転角を有する「巨大ファラデー効果」が磁性体-誘電体ナノ複相構造薄膜より発現することを世界に先駆けて発見した。この新しい材料は、45年ぶりに見出された。この材料が実用化できれば、光デバイスの大幅な高性能化、さらに小型化・集積化が可能となる。従来の電子を信号とする電子デバイスの進化と同様に、光デバイスが集積化されれば、いうなれば電子に代わる"光子"集積化回路が可能となり、電磁ノイズの影響が無く、高密度情報伝達が可能で、大幅な省エネルギー化を実現することも期待される。 また、TMD効果の特性向上に関しても、(1)作製法の改善として、co-separate sputtering methodの採用、および(2)合金組成の改善として、Coグラニュールに希土類元素のドーピングを試みることにより、それぞれTMD効果の値が4.1%および6.2%に向上することを明らかにした。 これら新しい複機能材料の発見や、新成膜方法および元素添加効果による特性向上などの結果が研究実績の概要で記述した学会発表賞等において評価されたことから、当初の計画以上に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、引き続き「トンネル磁気誘電(Tunneling Magneto-Dielectric:TMR)効果」(および「トンネル磁気光学(Tunneling Magneto-Optic:TMO)効果」の特性向上を目指して、作製装置の改良、強誘電体をターゲットとした材料設計を行うとともに、新しく発見した「巨大ファラデー効果」の研究をさらに深めていくことを計画している。 分散ナノ粒子の磁性金属の種類に着目し、より高機能なTMD,TMO特性が得られる材料を探索する(具体的にはCoPd、CoPt、ホイスラー合金などを検討)。結晶質誘電体にはMgF2、CaF2、AlF3、SrTiO3、BaTiO3、Bi4Ti3O12、PbTiO3、LiNbO3、LiTaO3、SbSIなどを対象とする。成膜装置は、現在所有している「差動圧力ナノ複相成膜装置」に結晶化を促進するため、基板加熱アシスト機構と基板バイアス機構を増設したことから、本装置を用いて上記材料のナノ複相薄膜の作製を試みる。成膜条件と基礎物性、機能物性、複機能物性との関係を明らかにして、最適組合せ条件を探索する。 得られた膜の成膜条件とナノ複相構造薄膜の複機能物性との関係を明らかにする。磁気-誘電複機能物性測定のために、微細加工設備を用いて評価素子に加工する。既設の磁気-誘電複機能物性評価装置、ファラデー効果評価装置を用いて、評価素子の高周波誘電特性(誘電率、誘電損失、分極特性)および高周波磁気特性(透磁率、自然共鳴周波数、磁気シールド特性)、ファラデー効果特性の評価を行う。また、膜の作製条件と、膜構造・界面組織などの基礎物性、および磁気-誘電、光-磁気複機能物性のメカニズムの解明を目指すことを目的とする。
|
Research Products
(14 results)