2018 Fiscal Year Annual Research Report
磁性金属-強誘電体ナノ複相構造薄膜の作製による新複機能物性材料の開発
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17H03385
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
増本 博 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 教授 (50209459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 伸聖 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 主席研究員 (70205475)
青木 英恵 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60733920)
池田 賢司 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局, 主任研究員 (40769569)
曹 洋 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 学術研究員 (50804598)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ複相構造薄膜 / 新機能物性材料 / 磁性金属 / 誘電体 / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究グループでは、新しい原理に基づくトンネル型磁気誘電(TMD)効果およびトンネル型磁気光学(TMO)効果を、誘電セラミックス中にナノ磁性金属粒子を分散させた磁性体-誘電体ナノ複相構造薄膜で発見した。さらに、2017年度に新複機能物性の発現(光通信に用いられる波長(1550nm)の光に対して、従来材料のビスマス鉄ガーネットの40倍もの巨大ファラデー効果を示す薄膜材料の開発)に成功した。 今年度は、この研究をさらに発展させた。[1]これまで最も高いTMD効果が発現する周波数はナノ磁性粒子の含有量に依存していたが、ナノグラニュラー構造と積層構造をハイブリッド化した薄膜を作製することにより、ナノ磁性粒子の含有量を変えずに任意の周波数帯に高いTMD効果を発現させることに成功した。[2]FeCo-Y-Fナノ複相構造薄膜において発見した巨大ファラデー効果のメカニズムの詳細を解明した。 具体的には、[1]組成がCo-(MgF2)のナノグラニュラー薄膜の間に、中間層としてCoナノグラニュラーを含まないMgF2中間層を挿入した。MgF2中間層の厚みの変化(1~4nm)により、同じナノ磁性粒子の含有量にもかかわらずTMD周波数を3kHzから300kHzに任意に制御可能であることを見いだし、TMD効果の応用に大きな自由度を付与することができた。また、[2]巨大なファラデー効果を示す発現メカニズムを明らかにするために、密度汎関数法による第1原理計算によってFe磁性粒子とフッ化物マトリックス界面の電子状態を計算した。さらに、Maxwell-Garnett理論によってファラデー回転角を計算し相関を調べた。その結果、ナノグラニュラー構造における磁性粒子とマトリックスの界面での磁性原子の軌道磁気モーメントの増大によって、大きなファラデー効果が生じたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、本申請グループが見いだした複機能物性である『トンネル磁気誘電効果』の高機能化を目指して、最大TMD効果発現周波数を任意にコントロール出来るテクニックを開発することができた。これまではナノ磁性粒子の含有量によって一意的に最大TMD効果発現周波数が固定されていたが、本テクニックにより応用化への自由度を拡げることに成功した。また、新しく発見した巨大ファラデー効果の応用化の前段階としてそのメカニズムの詳細を明らかにすることが出来た。このメカニズム解明を起点として現在新機能発現と高機能化の両輪で研究に取り組んでいる。 また、本申請課題を遂行している過程で、Co-SiO2ナノ複相構造薄膜において、ナノグラニュラー粒子の楕円形状化による13GHzを超える高い共振周波数を有する高周波軟磁性材料の開発に成功している。 上記の結果が認められ、日本セラミックス協会第31回秋季シンポジウム優秀賞「タイトル:Tunable frequency response of tunneling-magneto-dielectric effect in Co-MgF2/MgF2 granular films」、および日本セラミックス協会基礎科学討論会若手国際会議優秀発表賞「タイトル:Effect of Fe on tunneling magneto-dielectric responses in CoFe-MgF granular nanocomposites」を受賞した。 これら新しい複機能材料の高機能化や新機能のメカニズムの解明などは、本年度に行われた新成膜テクニックの確立および膜微細構造の精密化による特性向上などの結果によるものであり、結果として研究実績の概要で記述した学会発表賞等において評価されたことから、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年(平成31年)度は、最終年度として以下のことを計画する。 『トンネル磁気誘電(TMD)効果」(および「トンネル磁気光学(TMO)効果」の高機能化』 分散する磁性金属ナノ粒子の合金化、添加物の付与、粒子形状変化の積極的活用等を行う。マトリックス誘電体の候補として、複フッ化物、複酸化物などのより機能物性が高い材料との組み合わせへの挑戦を行う。ナノグラニュラー薄膜の構造設計による高機能化および新機能付与や、膜界面制御のための成膜装置の更なる改良による膜の結晶化、難機能発現材料への挑戦を行う。以上、様々な角度からの膜作製に取り組み、成膜条件と基礎物性、機能物性、複機能物性との関係を明らかにすることで、TMD効果およびTMO効果の高機能化をめざす。 『ナノ複相構造薄膜による新機能材料の開発および発現メカニズムの解明』 新しく発見した「巨大ファラデー効果」の詳細をより深めていく。新物質・新機能探査と同時並行して応用化を目指し、微細加工設備を用いて評価素子に加工する。既設の磁気-誘電複機能物性評価装置、ファラデー効果評価装置を用いて、特性評価を行う。膜の作製条件、膜構造・界面組織と基礎物性、複機能物性との関係を明らかにするとともにメカニズムの解明をめざす。 『総括』 上記成果は随時、論文、国内外会議等で研究発表していく。最後に、行ってきたナノ複相構造材料に関して、その機能発現方法やメカニズムなどの基本設計思想を確立し、最後に総括する。
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Research Products
(20 results)