2018 Fiscal Year Annual Research Report
超音波キャビテーション制御による液中微粒子の選択霧化分離
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17H03445
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
二井 晋 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (90262865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水田 敬 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (10336323)
五島 崇 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (90709560)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超音波 / ナノ粒子 / キャビテーション / 気泡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者により発見された、種々の径をもつサブミクロン粒子懸濁液を超音波霧化することで、特定の径を持つ粒子のみが気相に移って回収できる現象において、粒子のサイズ認識メカニズムの解明と、分離粒子径を自在に制御する手法の開発を目的とする。H30年度には、H29年度に開発した粒子を含む霧の回収方法をさらに改善し、高い粒子回収率を安定して達成できる方法を確立した。超音波霧化によるシリカ粒子の100 nmと300 nmの混合物の分離実験を行う際に、試料液の溶存気体を空気からアルゴンに変えることにより、回収液中の100 nm粒子濃度は仕込み液の5.2倍に濃縮される一方で、回収液中の300 nm粒子は仕込み濃度の1.1倍となり、100 nm粒子の選択濃縮に成功した。この100 nm粒子濃縮の傾向は空気飽和の場合と同じで、空気飽和では100 nm粒子が回収液に2倍濃縮され、アルゴンを用いることによる溶存気体量の影響とも考えられた。そこで、加圧空気を用いて試料を空気過飽和としたところ、100 nm粒子の濃縮度は回収液で3.2倍になった一方、回収液中の300 nm粒子は仕込み液の0.3倍となり、300 nm粒子が霧から排除された。これらの一連の結果は、霧による粒子分離とキャビテーションとの明確な関係を示す証拠である。 興味深いことに、キャビテーションの強度、すなわち振動子への投入電力を変化させて分離特性を調査したところ、100 nm粒子の分離・濃縮度にピークが見出された。これは、粒子分離に対して最適なキャビテーション状態があることを示しており、この物理的な意味を探求することで分離メカニズムの本質の解明と分離粒子径の制御法の確立を達成できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況について、上記の研究実績の概要で示したH30年度の計画として、溶存気体の種類と溶解量、および各種の操作条件が粒子分離に及ぼす影響について調査を行った。溶存気体を空気からアルゴンに変えると100 nm粒子の濃縮度と選択性が空気に比較して大きく向上したことは顕著な成果である。加圧空気を用いて試料液を空気過飽和としたところ、100 nm粒子の濃縮度はアルゴンに近かったが、選択性はアルゴンよりも優れ、分離特性は溶存ガス濃度のみではなく、ガス種で変化することが明らかとなった。そのため、現在はキセノンを用いて粒子分離への影響を調査している。操作条件の影響として著しいものは、振動子への投入電力が分離特性に及ぼす影響である。当初はキャビテーション作用が強いほど分離性能が向上すると予測したものの、特定の投入電力の値で分離度にピークが現れた。この事実は粒子分離に対して最適なキャビテーション状態の存在を示し、この物理的意味を探求すれば、H31年度の課題である分離メカニズムの本質に迫ることができる。H30年度で検討を予定していた、液粘度、添加物として界面活性剤や揮発性物質の影響の調査が遅れているため、H31年度に実施を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究が概ね順調に遂行されていることから、計画の変更は予定しておらず、微調整にとどめる。当初計画が遅れている部分のキャッチアップとして、分離特性に及ぼす溶液物性の変化および界面活性剤の添加の影響を調査する。H31年度の中心課題は分離メカニズムの解明であり、そのためにはキャビテーションで生じた気泡と粒子の相互作用についての検討が不足しているため、気泡含有水に粒子を加えた場合の気泡と粒子の個数密度の変化を測定し、静的気泡への粒子吸着が起こるかどうかを解明して気泡と粒子の相互作用を検討する。さらに、液体中での気泡の存在状態すなわち、液中気泡濃度分布の観察を行う。霧の発生場所である、液の噴水中でのキャビテーションの生成状態を可視化する方法として、ルミノール水溶液の発光を用いる手法を発案したので、分離場のキャラクタリゼーションを進めて理解を深める。予想される研究進捗の主な問題は実験的検討の遅れであり、その場合には研究分担者の課題を増やすことと、研究協力者の大学院生を増員することで対応する。
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Research Products
(5 results)