2018 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼年稿堆積物を利用したプランクトン相互作用系の共進化-生態ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
17H03730
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 丈人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40447321)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生態ー進化フィードバック / プランクトン / 年縞堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
敵対的な相互作用に見られる共進化のダイナミクスや、進化動態と個体群動態が相互に関係する生態-進化ダイナミクスの研究は、少数種の実験個体群や数理モデルによる理論的研究が中心であり、実際の野外生物群集における共進化-生態ダイナミクスの理解はほとんど進んでいない。本研究では、特定の湖沼にのみ形成される年稿(ねんこう)堆積物の利点と、既存情報が豊富なモデル生物の利点を活かして、野外プランクトン群集における共進化-生態ダイナミクスの実態を解明する。具体的には、長野県深見池の年稿堆積物を用いて、ミジンコ・ウィルス・藻類などのプランクトン相互作用系において、近過去から現在までの個体数(生態)ダイナミクスと共進化ダイナミクスを解明し、これまでにない野外条件かつ長期での共進化―生態ダイナミクスの詳細な解析を行う。 本年度は、前年度に採取した長野県深見池の年縞堆積物中に保存された微化石を用いて、深見池が形成された1662年から現在までの、枝角類プランクトンおよびベントスの生態ダイナミクスの評価を行った。その結果、深見池では過去に2度の富栄養化イベントが起きており、1850年頃から始まった最初の富栄養化では、枝角類ベントスから枝角類プラクトンに置き換わりが起きていた。また、1950年代以降の富栄養化では、枝角類プランクトンが増加していた。さらに、近年では、魚類捕食者が大きく影響していることも示唆された。 ミジンコの休眠卵を用いて、既存のミトコンドリアDNAマーカーや新規の核DNAマーカーを用いた集団遺伝学的分析を開始した。さらに、年稿堆積物中に保存されたDNAを用いて、藻類と細菌類およびそれらに感染するウィルスの生態ダイナミクスの評価を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた生態ダイナミクスの評価の実施や集団遺伝学的解析の開始を行い、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
年稿堆積物中に保存された微化石を用いた枝角類プランクトンおよびベントスの生態ダイナミクス評価に関する研究成果をまとめる。ミジンコの休眠卵を用いた集団遺伝学的分析と、年稿堆積物中に保存されたDNAを用いた藻類と細菌類およびそれらに感染するウィルスの生態ダイナミクスの評価を進める。
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