2018 Fiscal Year Annual Research Report
植物根への有害重金属元素の侵入をくい止める~植生回復を目指した研究基盤の確立
Project/Area Number |
17H03952
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
中村 進一 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (00322339)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴井 伸郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員(定常) (20391287)
頼 泰樹 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (30503099)
野下 浩二 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40423008)
大津 直子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40513437)
及川 彰 山形大学, 農学部, 准教授 (50442934)
尹 永根 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主任研究員(定常) (50609708)
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 教授 (70179919)
野副 朋子 明治学院大学, 教養教育センター, 講師 (90590208)
中井 雄治 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (10321788)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | グルタチオン / 亜鉛 / カドミウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では植物に部位特異的に与えた生理活性ペプチドの一種であるグルタチオンが植物の重金属動態に影響を及ぼす現象の分子メカニズムを解明し、それらを新たな栽培技術に応用展開するための研究基盤を確立すること目指している。 平成30年度はカドミウムをはじめとする重金属元素の動態にグルタチオンが及ぼす影響を調べた。その結果、グルタチオンの効果は重金属元素の種類によって異なることが明らかになった。その中でも亜鉛動態に及ぼすグルタチオンの影響を詳細に調べたところ、葉に部位特異的に与えたグルタチオンは根における亜鉛の吸収、根から地上部への亜鉛の移行を活性化していた。この時のグルタチオンがアブラナ根における遺伝子発現に及ぼす影響をトランスクリプトーム解析によって調べた。その結果、植物体内の亜鉛動態に影響を及ぼすことが期待される複数の遺伝子がグルタチオンに応答し、その発現量を変化させていた。この実験結果は葉に与えたグルタチオンによって誘導されたシグナルは篩管内を長距離移行して根に到達していることを示唆している。また、葉におけるグルタチオン合成能を高めたアラビドプシスの形質転換体を用いた実験では亜鉛動態に関して葉に部位特異的に与えたグルタチオンと同様の効果を示した。ポジトロンイメージング技術を用いることでアラビドプシスにおける亜鉛動態を可視化し、解析することにも成功した。グルタチオンがカドミウム動態に及ぼす影響を解明するための研究課題では根関連タンパク質のグルタチオンに対する応答を確認することができた。今後はこれらのタンパク質の機能解析を行い、根(根圏)におけるカドミウム動態にグルタチオンが及ぼす影響を分子レベルで明らかにしたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
部位特異的に植物に与えたグルタチオンが様々な重金属元素の動態に及ぼす影響を明らかにすることができた。その中でも亜鉛動態にグルタチオンが及ぼす影響に関してはその分子メカニズムの一端を明らかにすることができた。また、カドミウム動態にグルタチオンが及ぼす影響に関してもその関与が期待されるタンパク質の存在を見出すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた研究成果に基づき、それぞれの研究課題を継続していく。その中でも令和元年度は重金属元素動態に影響を及ぼす植物体内を移行するタンパク質をプロテオーム解析によって同定し、その機能を解析することに重点的に取り組む。また、これまでに行ってきたメタボローム解析とトランスクリプトーム解析、プロテオーム解析で得られた実験結果を俯瞰的に評価し、グルタチオンによって誘導され、植物体内を(長距離)移行し、重金属元素動態に及ぼすシグナルに関する研究基盤も構築することができたらと考えている。
|
Research Products
(6 results)