2017 Fiscal Year Annual Research Report
Network between bone and CNS
Project/Area Number |
17H04050
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
古賀 貴子 昭和大学, 歯学部, 講師 (90451905)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 骨代謝 / 神経変性疾患 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 骨粗鬆症 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨組織構成細胞(破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞)と神経系細胞の相互作用の有無を明らかにし、その制御機構を分子レベルで解明する目的で、骨組織構成細胞の分化過程における網羅的遺伝子解析を実施した。その結果から、破骨細胞において顕著に発現が亢進する分泌タンパク(新規遺伝子のため、仮名Increased gene of osteoclastogenesis; IGOとする)と骨芽細胞から分泌が亢進するタンパク質Sema3b, Slit3などをコードする遺伝子に着目した。IGO遺伝子について、CRISPR/Cas9システムにより遺伝子編集したRAW264.7細胞を作製した。この細胞は、対照細胞よりも早い段階で細胞融合をはじめ、より多核の破骨細胞に分化した。当初、分泌タンパク質として神経細胞に働きかけるタンパク質の候補として考えていたが、破骨細胞自身にも働く因子であることが分かってきた。この遺伝子の欠損マウスの骨組織を解析した結果、破骨細胞数と骨吸収が上昇して骨量が減少する傾向にあることを見出している。 また、骨と神経系の連関を探る一貫として、神経変性疾患のひとつであるパーキンソン病における骨代謝制御について解析を進めている。パーキンソン病患者は、黒質のドパミン神経が変性し、無動・寡動、すくみ足、姿勢反射障害といった運動障害を引き起こす。近年パーキンソン病患者に骨粗鬆症・骨折が高率であることが報告されているが、運動障害だけが骨粗鬆症の原因であるか否かについて解析した。マウスにドパミン神経の変性をもたらす薬剤MPTPを投与し、パーキンソン病モデルマウスを作製した。このマウスは、ドパミン神経は脱落するが、ヒトパーキンソン症状のような運動障害は起こさない。このマウスの骨量が減少することを見出した。すなわち、運動障害だけではなく、ドパミン神経そのものが骨代謝を制御する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請で予定していた実験は、計画に基づき順調に進めている。また、研究進捗の過程で新たに突き止めた結果から、本研究計画にプラスして、神経変性疾患と骨代謝の連関を生体レベルで明らかにする研究に着手し、かつ成果を上げており、本申請の目的達成に確実に近づいている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本申請の平成30年度の予定では、神経変性疾患として本年度にすでに着手しているパーキンソン病だけでなく、アルツハイマー病、情動・統合系疾患、物理的脳損傷モデルのマウスの骨代謝解析などを計画している。すでにアルツハイマー病モデルマウスの作成に着手している。また、平成30年度は、すでに着手しているMPTP薬剤投与によるパーキンソン病モデルだけでなく、遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子として同定されたa-シヌクレインや、Parkin、PINK1といった遺伝子欠損マウスとの比較により、運動障害ではなく、神経細胞および神経伝達物質が骨代謝を制御する可能性を証明することが可能となる。また、その分子メカニズムを明らかにしていく。パーキンソン病は診断直後から、運動障害に高い効力のある治療薬を内服していることが多い。したがって、パーキンソン病患者に骨粗鬆症が高率である原因として治療薬が関与しているか否かについても検討する。
|