2018 Fiscal Year Annual Research Report
Network between bone and CNS
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17H04050
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
古賀 貴子 昭和大学, 歯学部, 講師 (90451905)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 神経変性疾患 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 骨粗鬆症 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨と神経系の連関を探る一貫として、神経変性疾患の一つであるパーキンソン病における骨代謝制御について解析した。パーキンソン病患者は脳の黒質でドパミン神経が変性し、無動・寡動、振戦、筋固縮、姿勢反射障害といった運動症状を引き起こす。近年、パーキンソン病患者に骨粗鬆症の発症リスクが高率であることが報告されたが、運動障害による廃用が骨粗鬆症を引き起こしていると認識されている。しかしその詳細は不明であった。本研究では、神経毒MPTPをマウスに投与することで黒質ドパミン神経の欠落を誘導するモデルマウスを作製し、その骨代謝について検討した。このマウスは、ドパミン神経の顕著な欠落をひきおこすものの、自発的な運動障害を呈さないことを明らかにした。にも関わらず、このマウスの骨量は減少した。つまり、ドパミン神経の欠落そのものが骨代謝を制御する可能性を示唆した。このマウスから得た骨髄細胞を用いて、骨吸収を担う破骨細胞と、骨形成を担う骨芽細胞の分化実験を実施したところ、このマウスの血清を添加することによって、破骨細胞分化は促進し、骨芽細胞形成は抑制されることを見出した。つまり、ドパミンが欠乏することで、全身性の因子が骨髄の恒常性を変動させることを示唆している。本研究は国際科学雑誌に投稿中であるが、現在、パーキンソン病マウスで骨代謝を制御している液性因子の本体究明を進めている。 一方、脳と骨とを制御する共通メカニズムの解明に向けて、脳と破骨細胞で発現の高い因子に着目して機能を解析した。この因子は、現在までに機能不明の因子であり、登録された遺伝子名もない。この遺伝子をMerlotと名付け、Merlot欠損マウスの骨代謝を解析したところ、破骨細胞分化終始とアポトーシスを同時に制御して骨吸収を抑制する因子であることを解明し、論文に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として明らかになったことから、骨とパーキンソン病との関連を担う因子を同定する目的で、あらたにパーキンソン病原因遺伝子を欠損した一連のマウスを比較検討するプランを立て、着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
パーキンソン病患者の病態として脳にLewy小体といわれる変性タンパク質の蓄積が知られている。パーキンソン病における骨粗鬆症の原因として、Lewy小体が関与するか否かについて、一連のパーキンソン病モデルマウスを用いて骨代謝を比較検討する。具体的には、パーキンソン病の原因遺伝子として同定されたParkinやPINKIのノックアウトマウスを用いる。Parkinノックアウトマウスでは運動障害もLewy小体の蓄積もみられない。PINKIノックアウトマウスでも運動障害やLewy小体の蓄積は見られないが、ミトコンドリアの機能障害によりドパミン神経の細胞死が起こる。これらのノックアウトマウスを比較して、パーキンソン病に付随する骨粗鬆症の原因を探る。 また、近年、アルツハイマーモデルマウスを用いた研究から、アルツハイマーの病態として知られるタウタンパク質の蓄積や認知症状の発露に先だって骨粗鬆症が起こることが明らかになった。しかし、その理由は不明である。一連のアルツハイマーモデルマウスを入手し、タウタンパク質やアミロイドβの蓄積が骨代謝に及ぼす影響について解析を進展させる。
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Research Products
(11 results)