2018 Fiscal Year Annual Research Report
Strategic analysis for the development of new anticancer treatments targeting tumor-associated macrophages
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17H04060
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
竹屋 元裕 熊本大学, 事務局, 理事 (90155052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 章雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (70452886)
大西 紘二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (40613378)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腫瘍随伴マクロファージ / 腫瘍微小環境 / CD163 / 未分化多形肉腫 / CD163欠損マウス / IL-6 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主要な実績として、ヒトおよびマウスの肉腫の進展にCD163陽性腫瘍随伴マクロファージ(TAM)が重要な役割を果たすことを明らかにしCancer Research誌に発表した。ヒト未分化多形肉腫62例の臨床病理学的解析から、CD163陽性TAMの浸潤密度と全生存期間の短縮および組織学的悪性度との間に正の相関がみられた。次に2種のヒト肉腫細胞株をヒト単球由来マクロファージ(Mφ)と共培養すると、肉腫細胞の増殖が促進された。肉腫細胞の培養上清はMφのCD163発現を増強し、他の多くの腫瘍と同様にMφのM2型へのシフトを誘導する事が確認された。更にCD163のノックダウンにより共培養における腫瘍増殖効果が抑制された。以上から、CD163分子が腫瘍増殖に直接関与する事が示唆されたため、CD163欠損マウスへの肉腫細胞の移植実験を行うと野生型マウスに比し、腫瘍増殖が有意に抑制された。また、マウス腹腔Mφとマウス肉腫細胞との共培養実験では、野生型Mφに比べてCD163欠損Mφでは腫瘍細胞の増殖が抑制された。サイトカインアレーを用いた種々の増殖因子の検索によって、CD163欠損Mφでは、野生型に比し、IL-6の産生が低下していた。そこで、野生型MφでIL-6をノックダウンすると肉腫細胞への増殖促進作用が低減した。以上の一連の検討から、TAMのCD163を介してIL-6の産生が誘導され、これによって腫瘍細胞増殖が誘導されることが明らかとなった。 さらに、ヒト未分化多形肉腫28例について、腫瘍微小環境に出現する免疫細胞について解析を加えた(Med Mol Morphol, 2019)。その結果、TAMとcytotoxic T cellの浸潤密度に正の相関が認められた。しかし、これらの免疫細胞の浸潤密度と臨床病理学的諸因子との間には有意な関連はみられず、今後の検討課題と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍微小環境は腫瘍の増殖進展に大きな影響を与えており、とりわけ腫瘍随伴マクロファージ(TAM)については、その多くがM2型に分化し腫瘍の増殖進展を促進している。CD163は、SRCR(scavenger receptor cysteine-rich)スーパーファミリーに属する膜貫通タンパク質で、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体のスカベンジャー受容体であり、M2マクロファージで発現が増強し、M2マクロファージのマーカーとされている。 今年度の研究では、ヒト未分化多形肉腫を用いてTAMと腫瘍増殖との関連を明らかにすることが出来た。未分化多形肉腫は、従来、悪性線維性組織球腫と呼ばれていた腫瘍で、腫瘍内に多数の組織球(マクロファージ)が存在する腫瘍である。以前は、組織球自体が腫瘍細胞の本体と考えられていたが、現在では、腫瘍中の組織球はTAMであることが明らかとなっている。 他の腫瘍と同様、今回の検索で肉腫細胞の培養上清によってマクロファージがM2型にシフトすることを明らかにした。さらにM2マクロファージのマーカーの一つであるCD163が腫瘍細胞増殖に深く関与することがわかった。M2-TAMが腫瘍増殖を促進する主要なメカニズムとして、抗腫瘍免疫の抑制、腫瘍内の新生血管の誘導、腫瘍細胞への直接的増殖促進の3つが挙げられているが、今年度の未分化多形肉腫の検討から、TAMによる腫瘍細胞の直接的増殖促進に関する分子メカニズムの一端が明らかになった。即ちM2マクロファージのマーカーであるCD163を介して、細胞増殖作用を有するIL-6の産生が誘導され腫瘍増殖を促進することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討から、TAMと腫瘍細胞の細胞間相互作用においてはCD163分子が重要であることが明らかとなり、さらにCD163を介したIL-6の産生によって、腫瘍細胞増殖が誘導されることが明らかとなった。これらのデータを基盤として、次年度にはM2-TAMを治療標的として、現在進行中のマクロファージ機能を制御する天然化合物の解析を更に推し進め、候補化合物による抗TAM作用の分子メカニズムを解明するとともにin vivoモデルでの効果判定を行う。 一方、ヒト未分化多形肉腫組織を用いた解析では、腫瘍微小環境に出現するTAMやリンパ球などの免疫細胞の浸潤密度と臨床病理学的諸因子との関連は明らかではなく、さらに詳細な解析が必要と考えられた。また、マクロファージに発現する分子として、CD163以外の分子として、CD169やCD204についても更に解析が必要であり、次年度は、肉腫以外の腫瘍の解析やCD163以外のマクロファージ関連分子についても検討を加えたい。
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[Journal Article] Development of Kupffer cell targeting type-I interferon for the treatment of hepatitis via inducing anti-inflammatory and immunomodulatory actions2018
Author(s)
Minayoshi Y, Maeda H, Yanagisawa H, Hamasaki K, Mizuta Y, Nishida K, Kinoshita R, Enoki Y, Imafuku T, Chuang VTG, Koga T, Fujiwara Y, Takeya M, Sonoda K, Wakayama T, Taguchi K, Ishima Y, Ishida T, Iwakiri Y, Tanaka M, Sasaki Y, Watanabe H, Otagiri M, Maruyama T
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Journal Title
Drug Delivery
Volume: 25
Pages: 1055~1065
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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