2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analyses based on iron dynamics and multiomics to overcome oxidative stress-induced carcinogenesis
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17H04064
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
豊國 伸哉 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90252460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 泰昌 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (30403489)
赤塚 慎也 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (40437223)
山下 享子 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (50754975)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉄 / がん予防 / 中皮腫 / アスベスト / CTGF / 酸化ストレス / オミクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は生体における鉄ダイナミクスを多面的に理解することにより最終的にヒトがんの予防や発症遅延を目指すプロジェクトである。今年度はこれまで解析してきたアスベスト誘発中皮腫発がんに関して、主要な鉄トランスポーターであるDMT1(Slc11a2)トランスジェニックマウス(TG)において、アスベスト曝露後の中皮腫発生に変化があるかどうかを検討した。これまでに、中皮細胞を含む種々の細胞でDMT1の発現が高まっていることを確認している。また、TGの炎症細胞においてアスベスト曝露でスーパーオキシド産生が少ないことを明らかにしてきた。クロシドライト3mg腹腔内投与による発がん実験を施行すると、最終的にwild-type (WT)とTGではともに50%程度の中皮腫発生率であったが、TGで発生がやや遅れた(P=0.069)。これはイニシエーションには差がなく、炎症の多寡が中皮腫の発生時期を規定したことを示唆していると考える。また、中皮腫の新たな治療を目指して、中皮腫が多量に産生しているConnective tissue growth factor (CTGF)に対するヒト抗体に中皮腫細胞の増殖を抑制する作用があるかどうかを、in vitroとin vivoで検討した。多数のヒト中皮腫細胞株を使用したがACC-MESO-4に対して最も強い増殖抑制効果が認められたため、同株をヌードマウス胸腔内投与に使用した。Transwellモデルにおいて線維芽細胞を共培養すると、中皮腫細胞の増殖は盛んになったが、これも同抗体で有意に抑制することができた。中皮腫細胞を胸腔内に投与するorthotopic モデルにおいても、本抗体は有意に中皮腫細胞の増生を押さえ、組織学的には中皮腫細胞と線維芽細胞の両方にアポトーシスを起こすことが判明した。この結果より、本抗体の臨床介入試験をする意義があるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CTGF抗体はin vitroにおいて中皮腫細胞のみに対しては腫瘍増殖抑制効果が比較的弱かったが、正所性の動物移植モデルにおいてはアポトーシスも認めるなど有意な治療効果が認められた。このように中皮腫の分子標的治療法の効果が予想より早い時期に判明した。DMT1トランスジェニックマウスにおいてクロシドライトに曝露したときの好中球・マクロファージのスーパーオキシド産生が低下していることが明らかとなり、最終的にDMT1トランスジェニックマウスではクロシドライト投与後の中皮腫発生がwild-typeに比較して遅延した。これは、アスベスト誘発中皮腫発がんにおいて、炎症もプロモーションとして重要であることを示唆しており、当初の計画以上の重要な論理的な考察をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように当初の予想以上に進行している。これまでに発現やゲノムの変異に関する多量のオミクスデータを得ているが、今年度はそのデータのコンピュータ解析にも力を注ぎ、最終年度として総括を行う。また、シデロフォア結合タンパク質であるLCN2/NGALの発がんにおける意義についても追究する。
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