2017 Fiscal Year Annual Research Report
組織傷害におけるマクロファージの形質転換機構とその意義
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17H04068
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
田中 正人 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (00294059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村谷 昌樹 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (60398229)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 炎症 / マクロファージ / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージは組織傷害の炎症期には、炎症を促進する役割を担う一方で、修復期には、炎症の収束と組織修復に重要な役割を担う。本研究ではこのマクロファージの形質転換機構について研究を進めた。 1. CD169マクロファージの形質転換における転写因子の役割 我々は、腸管に局在するCD169マクロファージが、腸炎において、急性期にCCL8を産生して炎症を惹起することを見いだし、その形質の決定に重要な転写因子としてc-Mafを同定した。さらに、このCD169マクロファージが、腸炎の炎症期から修復期への移行の際に、c-Mafの発現量が変化することを見いだした。すなわち、マクロファージに炎症刺激が加わると、c-Maf依存的なサイトカイン産生が見られると同時に、c-Mafが転写レベルおよびタンパクレベルでその量が減少し、その結果としてc-Mafと拮抗関係にある別の転写因子であるNrfによる転写活性が、相対的に上昇することを明らかにした。Nrf2は酸化ストレスに対する耐性や抗炎症に関与する転写因子であり、c-MafとNrf2の転写活性のバランスが変化することによって、CD169マクロファージが修復期に適応した形質を獲得することが明らかとなった。 2. 修復期に出現する炎症抑制性単球の同定 我々は、本研究の遂行の過程で、腸炎モデルの回復期にCD169マクロファージとは異なるマーカー分子を発現する単球サブセットが骨髄であらたに産生され、傷害部位に浸潤すること、およびこの細胞集団が、腸炎の組織修復に関与する可能性を見いだした。この単球は、定常時の骨髄や末梢血中にはほとんどみられないが、組織傷害の回復期になると骨髄で産生が見られ、末梢血中に放出される。この単球サブセットが傷害部位に浸潤すると、通常の炎症性単球サブセットに比べて、炎症抑制性の性質を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マクロファージは可塑性の高い細胞であり、周囲の状況に合わせて、容易に形質を変えることのできる細胞と考えられている。本研究では、この概念をもとに、組織傷害の局所におけるCD169マクロファージの形質転換の機構解明を第一の目的として研究を進めた。その結果、形質転換の分子機構として、c-MafとNrf2の機能連関とその病理的意義の一端を明らかにすることができた。一方で、我々は、このCD169マクロファージの組織傷害の局所における形質転換とは別に、組織傷害の回復期にあらたに出現する炎症抑制性単球の同定に成功した。このことは、組織傷害の局面におけるマクロファージの変化の機構に、 1.局所におけるマクロファージの形質転換 に加えて 2.組織傷害の各局面に適した、骨髄のおけるあらたな単球サブセットの産生 という2つの異なる機構が存在することを示している。 本研究のこの2つの成果は、マクロファージおよび単球に関する研究分野で、最も重要な課題の1つである、マクロファージの形質転換機構の解明に大いに貢献するものであり、来年度以降にさらなる発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、本研究は、組織傷害におけるマクロファージの形質の変化に2つの異なるメカニズムが関与していることを明らかにした。来年度は引き続き、この2つのマクロファージの形質転換の機構の解明を進める。 1.CD169マクロファージの形質転換におけるc-Mafの役割 我々は、本年度に、種々の刺激によりCD169陽性マクロファージにおけるc-Mafの発現量の変化が起こることを見いだしている。来年度は、本年度に引き続き、この発現量の変化が、虚血再灌流傷害や免疫賦活剤投与等の種々の刺激によって、生体内で起こるかどうか、およびc-Maf欠損キメラマウスを用いて、c-Maf欠損がマクロファージの形質変化に及ぼす影響の有無を検討する。さらに、CD169陽性骨髄マクロファージを用いて、培養細胞レベルでのc-Mafの発現変化の分子機構の解析を行う。これまでの解析により、c-Mafの発現減少が、mRNAレベルとタンパクレベルの両方で制御されていることが明らかとなってきており、それぞれのレベルの分子機構の解明に取り組む。 2. 組織修復に関与する単球サブセットの機能解析 本研究の遂行の過程で同定した、炎症抑制性単球サブセットについて研究を進める。すでに我々は、この単球が特異的に蛍光標識された遺伝子改変マウスや、この単球を誘導的に消去できる遺伝子改変マウスの作製に成功している。来年度は、これらのマウスを用いて、この組織修復サブセットの、腸炎モデルにおける動態の詳細を解析するとともに、本サブセットを腸炎回復期のマウスのより調製し、そのサイトカイン産生能や遺伝子発現を解析する。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Tumor Necrosis Factor-Mediated Survival of CD169(+) Cells Promotes Immune Activation during Vesicular Stomatitis Virus Infection.2017
Author(s)
Shinde PV, Xu HC, Maney SK, Kloetgen A, Namineni S, Zhuang Y, Honke N, Shaabani N, Bellora N, Doerrenberg M, Trilling M, Pozdeev VI, van Rooijen N, Scheu S, Pfeffer K, Crocker PR, Tanaka M, Duggimpudi S, Knolle P, Heikenwalder M, Ruland J, Mak TW, Brenner D, Pandyra AA, Hoell JI, Borkhardt A, Haussinger D, Lang KS,
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Journal Title
J Virol
Volume: 92
Pages: 01637
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Hyperoxidation of ether-linked phospholipids accelerates neutrophil extracellular trap formation.2017
Author(s)
Yotsumoto S, Muroi Y, Chiba T, Ohmura R, Yoneyama M, Magarisawa M, Dodo K, Terayama N, Sodeoka M, Aoyagi R, Arita M, Arakawa S, Shimizu S, Tanaka M.
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Journal Title
Journal, Scientific Reports
Volume: 7
Pages: 16026
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Depletion of myeloid cells exacerbates hepatitis and induces an aberrant increase in histone H3 in mouse serum.2017
Author(s)
Piao X, Yamazaki S, Komazawa-Sakon S, Miyake S, Nakabayashi O, Kurosawa T, Mikami T, Tanaka M, Van Rooijen N, Ohmuraya M, Oikawa A, Kojima Y, Kakuta S, Uchiyama Y, Tanaka M, Nakano H.
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Journal Title
Hepatology
Volume: 65
Pages: 237-52
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] CD11c+ resident macrophages drive hepatocyte death-triggered liver fibrosis in a murine model of nonalcoholic steatohepatitis.2017
Author(s)
Itoh M, Suganami T, Kato H, Kanai S, Shirakawa I, Sakai T, Goto T, Asakawa M, Hidaka I, Sakugawa H, Ohnishi K, Komohara Y, Asano K, Sakaida I, Tanaka M, Ogawa Y.
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Journal Title
JCI Insight
Volume: 2
Pages: 92902
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Salt suppresses IFNgamma inducible chemokines through the IFNgamma-JAK1-STAT1 signaling pathway in proximal tubular cells.2017
Author(s)
Arai Y, Takahashi D, Asano K, Tanaka M, Oda M, Ko SBH, Ko MSH, Mandai S, Nomura N, Rai T, Uchida S, Sohara E.
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 7
Pages: 46580
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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