2020 Fiscal Year Annual Research Report
Perturbation of redox balance in pathophysiology of diabetes
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17H04199
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
篁 俊成 金沢大学, 医学系, 教授 (00324111)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / 骨粗鬆症 / ヘパトカイン / 酸化還元ストレス / 褐色脂肪組織 / 活性酸素種 / 熱産生 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐色脂肪組織および骨におけるSePの受容体と作用機構解明を通じて、還元ストレスの臓器分化への寄与を明らかにする。 ① SePがBAT分化、および白色脂肪組織のBAT化に及ぼす作用: (1)褐色脂肪特異的SeP 欠損マウス(BAT-Selenop-/- マウス)と肝特異的SeP欠損マウス(L-Selenop-/- マウス)を作出した。2時間の急性寒冷負荷において、BAT-Selenop-/-マウスは低体温抵抗性の亢進示す一方、L-Selenop-/-マウスはコントロールマウスと同等であった。またBAT-Selenop-/-マウスではノルアドレナリン(NA)投与によってBATならびに深部体温の温度上昇が有意に亢進した。これらの結果はBAT由来のSePが熱産生を負に制御することを示唆する。(2)野生型マウスへの高脂肪高ショ糖食負荷によって、肝臓でのSelenop発現および血中SePレベルが上昇した一方、BATでのSelenop発現に変化はなかった。加えてBAT-Selenop-/-マウスへの高脂肪高ショ糖食負荷によってNA応答性BAT温度上昇亢進が消失した。これらの結果から、糖尿病状態の肝臓で増大したSePがBATに流入しNA感受性を減弱させたと推察された。 ② SePが骨代謝に及ぼす作用: 初代培養骨芽細胞およびSeP KOマウス、臓器特異的KOマウスを用いてシグナル伝達経路を調べ、肝臓から分泌されたSePが骨芽細胞の特異的受容体を介して細胞内に入り、自らの抗酸化作用によってROSの発生を低下させることで、IGF1シグナルを抑制していることを明らかにした。さらに、2年齢のSeP KOマウスについても調べ、これらのマウスでもインスリン感受性や骨粗鬆症が野生型と比べて改善していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までにSePは還元ストレスを介して、BATではカテコラミン抵抗性、骨芽細胞ではIGF-1抵抗性を惹起して、それぞれ熱産生障害、骨形成障害をもたらすことを証明することができた。現在それぞれ学術論文として投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回作出したBAT-Selenop-/- マウスとL-Selenop-/- マウスについて、表現型解析をさらに進める。具体的には、L-Selenop-/- マウスが高脂肪高ショ糖食負荷によるBAT機能低下に対して抵抗性を示すかどうか検討する。また両マウスに長期間の寒冷刺激を負荷し、白色脂肪組織のベージュ化に及ぼす影響を検討する。また初代褐色脂肪細胞を使用して、Selenop欠損またはSePタンパク投与が褐色脂肪ならびにベージュ脂肪分化に及ぼす影響を検討する。加えて、本年度の研究で見いだした肝とBATでのSelenop発現挙動の違いに着目し、BAT特有のSelenop発現制御機構の解明を目指す。具体的にはBAT由来不死化細胞株にSELENOP promoterレポーターベクターを導入し、BATでNAがSelenop発現を抑制する機序を検討する。以上の検討は、BATでのSelenop発現抑制を標的とした将来の代謝疾患改善薬の開発の端緒となることが期待される。骨代謝に関しては数年分のヒト検診データや糖尿病患者検体での、骨量、骨折歴、血液成分の臨床データ収集と、これまで得られた遺伝子組み換えマウスのデータを用いて、ヒトにおけるSePと骨粗鬆症や骨折リスクとの関連を調べる。
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Research Products
(11 results)