2018 Fiscal Year Annual Research Report
エピゲノム制御機構の破綻によるグリオーマ発生・進展機構の解明と治療標的の探索
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17H04300
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
武笠 晃丈 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90463869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永江 玄太 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (10587348)
田中 將太 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80643725)
篠島 直樹 熊本大学, 病院, 講師 (50648269)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エピゲノム / メチル化 / ヒドロキシメチル化 / 腫瘍発生 / 悪性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度来、Isocitrate dehydrogenase遺伝子(IDH1/2)に変異を持つ神経膠腫の一群(IDHmt glioma)の悪性転化機構に関し、悪性転化に伴うDNAのメチル化変動及びヒドロキシメチル化変動、それに伴う遺伝子発現の変化を解析する事で悪性転化の機序の解明を試みている。今年度、5症例のastrocytic glioma悪性転化症例を解析対象とし、悪性転化前後の手術検体よりDNAとRNAを抽出した。DNAに対してOxidative Bisulfite(OxBS)法を用いて酸化処理を行い5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)を可視化した上でメチル化アレイ(Infinium_EPIC)施行した。悪性転化前後のDNAメチル化、ヒドロキシメチル化状態を比較したところ、5症例において悪性転化時、共通して能動的脱メチル化を認める3120箇所のCpG領域(能動的脱メチル化領域, actively demethylated regions: AcDR)が同定された。この領域は悪性転化時、特に優先的に能動的脱メチル化が起きている可能性がある。領域的特徴としては、AcDRはopen sea領域及びintergene領域に多く分布していた。また遺伝子領域にAcDRを含む遺伝子は2647遺伝子あり、パスウェイ解析を行うと同遺伝子群にはPathways in cancerやHippo signal経路といった癌関連経路の遺伝子が有意に濃縮していた。この中で転写因子をコードする遺伝子は2647中140遺伝子であり、この遺伝子群にはTranscriptional misregulation in cancerなどの癌関連経路の遺伝子がさらに有意に濃縮していた。これらの事から、悪性転化時に一部の癌関連遺伝子で優先的に能動的脱メチル化が起きている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、OxBS法によるDNAの損耗率の高さに対処するため、一定の時間を要した。昨年度得られた知見に基づくDNAの損耗を最小限にする工夫を行いつつ、OxBS処理によりDNAの損耗が起きても、メチル化アレイ解析に必要な250ng程度の処理後DNA量を確保できる症例に絞って解析をおこなう方針とした。結果的に該当する症例は5例となったが、臨床検体の処理・解析を開始して以降に関しては、それほど大きな遅れは生じていない。現在までのところ、IDHmt gliomaでありかつastrocytic gliomaの悪性転化症例5例の、悪性転化前後計10サンプルの凍結検体からDNA・RNAを抽出し、実験・解析を進めている。症例登録に関しastrocytic gliomaに限定した理由としては、悪性転化は基本的にIDHmt glioma特にastrocytic gliomaに多く起こる現象であること、oligodendrogliomaは1p/19q co-deletionなどastrocytic gliomaにはない遺伝的特徴を持っており、混合して解析することが適切ではないからである。DNAに関しては、全てのOxBS処理及びメチル化アレイ(Infinium_EPIC)が完了し、ゲノム上85万箇所のメチル化・ヒドロキシメチル化状態のデータを得ており、結果のデータ解析に入っている。結果の解析に関してはまだRNA-seqに基づく遺伝子の発現データとの統合解析に着手できていないが、悪性転化前後で優先的に能動的脱メチル化が起きていると思われる遺伝子群を同定し、それらの遺伝子のパスウェイ解析を終えた。RNAに関しては、RNA-seqを完了しているが、発現情報を解析するためfpkmへのデータ換算処理を行っている途上である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた種々のデータを元に、引き続きグリオーマのエピゲノム異常に起因する腫瘍発生・進展機構の解明を目指す。前述の通り現在までに、悪性転化に伴い特定の癌関連遺伝子で優先的に能動的脱メチル化が発生している可能性が示唆されている。仮に能動的脱メチル化と相関して、これらの癌関連遺伝子の発現が変化していれば、悪性転化時に発生した能動的脱メチル化により特定の癌関連遺伝子の発現が変化し、グリオーマの予後に影響を与えている可能性も考えられる。本研究では今後、得られたRNA-seqの発現情報と能動的脱メチル化の相関を調査し、特定領域での能動的脱メチル化によりそれらの領域の遺伝子発現変動が起きているかの検討を行う。発現変動が発生しているようであれば、TCGA等の外部データベースの情報と統合解析を行い、それらの発現変動がグリオーマの予後に影響を与える可能性があるのか確認を行う。同時に、このような遺伝子の発現変動により、より広い範囲で下流遺伝子の発現変動が起こっている可能性がある。特に、前述の通り140個の癌関連転写因子遺伝子も悪性転化に伴い能動的脱メチル化を受けている事が分かっており、転写因子の発現変動がもし起きているようであれば、下流の広範な遺伝子群の発現変動につながる可能性がある。これらに関しては、既に解明されている遺伝子間の発現相関・相互作用を参考に下流遺伝子の発現変化を検討する。また、AcDRの各領域の塩基配列に対しモチーフ解析を行い、同領域に特異的にリクルートされている転写因子が無いか、その探索も行う予定である。モチーフ解析により特定の転写因子の関与が示唆されれば、細胞株を使った実験にてその転写因子に対しsiRNA法による遺伝子ノックダウンを試み、関与が想定された遺伝子が実際に発現変化を起こすか確認を試みる事を計画している。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] DNA demethylation is associated with malignant progression of lower-grade gliomas2019
Author(s)
Nomura M, Saito K, Aihara K, Nagae G, Yamamoto S, Tatsuno K, Ueda H, Fukuda S, Umeda T, Tanaka S, Takayanagi S, Otani R, Nejo T, Hana T, Takahashi S, Kitagawa Y, Omata M, Higuchi F, Nakamura T, Muragaki Y, Narita Y, Nagane M, Nishikawa R, Ueki K, Saito N, Aburatani H, Mukasa A
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 9
Pages: 1903
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Molecular characteristics of diffuse cerebellar glioma2018
Author(s)
Mukasa A, Nomura M, Nagae G, Yamamoto S, Tatsuno K, Ueda H, Fukuda S, Umeda T, Suzuki T, Otani R, Kobayashi K, Maruyama T, Tanaka S, Takayanagi S, Nejo T, Takahashi S, Ichimura K, Nakamura T, Muragaki Y, Narita Y, Nagane M, Ueki K, Nishikawa R, Shibahara J, Aburatani H, Saito N
Organizer
The 22nd International Conference on Brain Tumor Research & Therapy (ICBTRT)
Int'l Joint Research / Invited
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