2017 Fiscal Year Annual Research Report
免疫系細胞の膜輸送を制御する新規分子の発見とその病態の解明
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17H04379
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
筑波 隆幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (30264055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡元 邦彰 岡山大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (10311846)
坂井 詠子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10176612)
西下 一久 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (20237697)
門脇 知子 (筑波知子) 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (70336080)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 免疫細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫細胞では細胞内部で精密な膜輸送や分泌機構が機能している。我々は独自の研究から、破骨細胞の分化過程で増大する遺伝子Rab44を発見した。Rab44遺伝子をノックダウンした破骨細胞は活性化・巨大化し、逆にRab44を過剰発現した細胞では活性化が抑制され、エンドゾームの粒子数が増大した。従って、Rab44は細胞形態と膜輸送の制御を行っている遺伝子であると予測される。本研究の目的は、我々が独自に見出した新規遺伝子Rab44の機能を破骨細胞のみならず免疫系細胞を用いて明らかにする事である。 1)破骨細胞での新規Rab44遺伝子の発見 破骨細胞は骨を分解する多核細胞であり、骨吸収時には“分泌リソソーム”を骨面に放出する。分泌リソソームはミネラルを溶解するプロトンや有機質成分を分解するタンパク質分解酵素が含まれる。我々は破骨細胞におけるリソソーム機能を制御する新規遺伝子を同定するため、分化前のマクロファージと破骨細胞とのmRNAを抽出し、逆転写~DNAマイクロアレーを行なった。発現レベルに差異のあった遺伝子を分類し、膜タンパク質群と膜輸送調節因子群に分けた。この方法で全く論文報告されていないRab44遺伝子が同定できた。 2)破骨細胞におけるRab44遺伝子ノックダウンの解析 Rab44遺伝子をマクロファージから破骨細胞に分化する間、siRNAでノックダウンしてTRAP染色を行なった。Rab44ノックダウン破骨細胞は細胞同士の融合が活発になっており、巨大化・多核化した。さらにRab44ノックダウン破骨細胞は殆どのマーカー遺伝子の発現レベルが上昇していたことなどからRab44が欠損すると破骨細胞が活性化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)Rab44遺伝子の免疫担当細胞における機能 Rab44遺伝子をマクロファージ系RAW-D細胞に過剰発現させて細胞内局在を調べると、エンドソーム・リソソームに局在することが分かった。さらにRANKL刺激を行って、破骨細胞分化させると、単核細胞に留まる細胞が多く、破骨細胞分化が抑制されていた。この知見はRab44遺伝子ノックダウンと逆になっていた。さらに過剰発現細胞の細胞内オルガネラを観察すると、Rab44過剰発現マクロファージはコントロール細胞に比べて、特にリソソームの影響は少なく、むしろ初期エンドソーム(EEA1陽性コンパートメント)の粒子数が増大していた。従って、Rab44はエンドソーム・リソソームでの膜輸送を制御していると予想される。マスト細胞でのRab44の機能を解析する目的で、マウス非腫瘍性細胞株NCL-2細胞やP815細胞を用いてsiRNAによるノックダウンと過剰発現系を作成して解析した。特に過剰発現細胞ではEGFP-Rab44を発現させて、細胞内局在を解析した。また分泌顆粒の電子顕微鏡像を観察した。 2)Rab44結合タンパク質の同定 一般的にRabタンパク質には多くのエフェクタータンパク質が結合して機能する。そこでRab44タンパク質に結合するタンパクを同定を試みた。まず内在性タンパク質について免疫沈降法を行った後、質量分析法を用いて相互作用する分子を同定した。結合する可能性が示された分子は再度もう一方に分子の抗体を用いて免疫沈降法で確認した。次にRab44過剰発現細胞を用いて、Rab44プルダウンアッセイを行い、結合タンパク質を質量分析法により同定した。現在まで少なくとも3つの分子が結合していることが明らかとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Rab44遺伝子欠損マウスの作成 本遺伝子の生体内での機能を探るべく遺伝子欠損マウスを作製し、解析を試みる。作製は既に理化学研究所生体ゲノム工学研究チームに協力を依頼し、CRISPR/Cas9による迅速な作製方法で実行している。受精卵に注入したsgRNA/Cas9 が標的遺伝子の片方もしくは両方のアレルを切断すると変異マウスが得られる。両アレルが破壊された場合には,欠損ホモマウスとなる。卵割したのちにCas9が標的配列を切断するとモザイクマウスが生まれるため区別できる。 2)アレルギー疾患モデルマウスでのRab44の機能 マスト細胞での機能異常は、アレルギー疾患に対する感受性の変化が予想される。そこで喘息モデルおよびアトピー性皮膚炎を惹起して解析を行う。喘息を惹起する実験として、卵白アルブミン+水酸化アルミニウムゲルで腹腔内感作を行い、卵白アルブミン吸入によって誘導する。気道抵抗の測定により、気道過敏性の解析および気管支肺胞洗浄液や肺組織から気道炎症の解析を行う。 一方、アトピー性皮膚炎実験としてハプテンであるピクリルクロライドを反復塗布して、アトピー性皮膚炎症状を惹起誘発し解析を行う。これを発赤/出血,浮腫,脱毛/組織欠損,乾燥,発疹の5項目について0-3までのスコアーを付けて,総スコアーから本皮膚炎への感受性を決定する。
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