2017 Fiscal Year Annual Research Report
セメント質のナノ表面形態を模倣したチタンインプラントによる歯根膜誘導
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17H04387
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 将博 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (90549982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯科補綴学 / 細胞・組織 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,歯根膜細胞がセメント質表面として認識するチタン表面をナノ技術により確立し,チタン表面にセメント質産生を介したシャーピー線維構造の形成を誘導することで,歯根膜結合をもつ新たなインプラント技術の基盤を構築することである. 平成29年度では,グレードⅡ純チタンディスク(機械研磨加工)に,申請者が確立している表面処理方法(Kato E et al., Dent Mater, 2015)を用いて,① 機械研磨面(平滑面),② 濃硫酸処理面(ミクロ粗面),2種類のナノ表面の試料を作製し,表面特性の評価を行った.ヒト抜去歯のセメント質表面を対照試料として用いた.各種チタン表面とセメント質表面に関して,研究協力者の技術協力のもと、非接触光学式三次元プロファイラーと走査型電子顕微鏡の画像解析により表面形態を、超微小押し込み硬さ試験機により表面の微小硬度を評価した.現在,実験条件が整い,各種チタン表面性状とセメント質表面の表面形態および機械的特性の類似性を検討中である. また,細胞培養試験により,チタンの表面性状が歯根膜細胞の分化に与える影響を評価した.培養1,5および10日目に遺伝子発現解析を行った結果,ヒト歯根膜細胞のセメント質関連マーカー(CEMP1やSPON1)はチタンナノ表面上でより早く発現し,かつ,培養期間を通じて,それらの発現水準は高かった.チタンナノ表面上の細胞外基質中のカルシウム量は,平滑面やミクロ粗面に比べて,培養10および30日後で,著しく増加した.培養20日後の走査型電子顕微鏡観察やエネルギー分散型X線元素分析により,チタンナノ表面上ではカルシウムが検出された球状構造物を含む細胞外基質の形成を認めたのに対し,その他の表面上では,カルシウム原子が検出されない滑沢な細胞外基質の形成を認めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セメント質表面とチタンナノ表面との類似性を検討する実験条件の整備や解析方法が確立済みであり、データの採取と解析が進んでいる。また、細胞培養では、チタンナノ表面上でヒト歯根膜細胞のセメント質関連遺伝子発現の上昇が確認されたことから、現時点で仮説通りの成果が得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,チタンナノ表面特性のキャラクタライゼーションを完了するとともに、ラット脱細胞化歯周組織‐チタン歯ユニットのラット腎皮膜埋入モデルおよびヒト歯根膜組織で被包したチタンインプラントの免疫不全マウス顎骨埋入モデルを用いて,ナノ表面チタンインプラント上でのセメント質誘導とシャーピー線維構造の形成,およびインプラントと歯根膜との直接的結合の成立を検証する. 歯根膜マトリックスを保持したまま脱細胞化した5週齢のラット歯槽骨抜歯窩に,CAD/CAMで作製した抜去大臼歯と同形のチタン歯を挿入したユニットを,14週齢ラット腎被膜下に埋植する.術後3週から8週におけるチタン歯と歯根膜の直接結合を,非脱灰組織切片の光学顕微鏡観察および縦断切片のTEM観察,EPMAによる成分分析を用いて評価する. 機械研磨面もしくはナノ表面の棒状チタンインプラント(直径0.6 mm・長さ1.7 mm)を,温度応答性培養皿上で培養したヒト歯根膜細胞シートで被包し,抜歯2‐3週後の7週齢免疫不全マウス(NOD/ShiJic-scid)の上顎第二大臼歯抜歯窩へ完全埋入する.埋入3~4週後に,非脱灰切片および脱灰パラフィン切片を作製する.一般化学染色による組織形態計測学的評価とともにセメント質関連マーカーを免疫組織化学染色により同定する.また,インプラント‐組織界面の超微細構造と元素分布をTEM観察およびEPMAを用いて解析する.さらに,ヒト歯根膜細胞を長期的in vivo用蛍光トレーサーで標識し,移植部位への生着率を評価する.セメント質形成を確認後,矯正力による歯体移動や抜歯窩骨壁欠損の同時再生の可否を判定し,歯根膜としての機能を評価する.
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