2018 Fiscal Year Annual Research Report
成熟機能細胞の分化転換能(分化可塑性)を利用した新たな組織再生療法の可能性
Project/Area Number |
17H04411
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井出 信次 鶴見大学, 歯学部, 助教 (00611998)
梅木 泰親 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10552408)
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (20380090)
田所 晋 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (70552412)
舘原 誠晃 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90380089)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生医療 / 分化転換 / 脊髄損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにわれわれが報告してきた、骨芽細胞株MC3T3-E1 を用いた脊髄損傷の再生実験と同様に、初代培養骨芽細胞を用いても脊髄損傷後の神経再生、下肢運動機能回復などが可能か否かについて検討した。その結果、①マトリゲルと混和したMC3T3-E1 を移植した群、②マトリゲルと混和した初代培養骨芽細胞(マウス大腿骨あるいは頭蓋冠より分離・培養)を移植した群、③マトリゲルのみを注入した群、④切断のみ行ったコントロール群の4群において、①および②の2群で同様のマウス下肢運動のBBB Scaleの改善が認められた。また、脊損後に経時的に組織を採取し、脊髄切断部、切断部頭側、切断部尾側のそれぞれにおける脊髄組織の組織学的検索を詳細に行ったところ、それぞれの細胞移植に関連した組織修復・再生が認められた。また、これらの組織において、神経細胞関連分子を指標として、RNA レベル、タンパク質レベルでその発現につきreal-time PCR、免疫組織化学的手法等を用いて検索し、移植細胞の動向、発現分子の変化、周囲細胞への分化誘導の有無、分化転換の有無について確認したところ、移植細胞周囲での発現分子の変化が認められた。細胞移植群では、1)切断部に移植細胞あるいは周囲より誘導された細胞が密に存在する、2)切断部より尾側で脊髄組織の変性が抑制される、3)移植細胞以外の周囲の細胞にも神経細胞への誘導効果が見られる、という所見が得られた。これらの脊髄損傷に対する再生治療効果を確認することで、骨芽細胞株MC3T3-E1 と同様に初代培養骨芽細胞でも脊髄損傷の再生の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通りに進行しており、今後は他の細胞を使った再生の可能性について検討準備が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果をもとに、成熟機能細胞の一つである骨芽細胞株による脊髄損傷の再生医療と同様に、他の組織・臓器由来の様々な成熟機能細胞を用いてもそれらによる同様の脊髄損傷への再生治療が可能か否かにつき検討することで、周囲環境による分化転換現象を利用した再生医療が、どのような成熟機能細胞でも普遍的に可能であるか、または各種成熟機能細胞それぞれにより周囲環境による分化転換誘導の反応性に差があるのか否かを明らかにする。この検討により、再生医療に用いる細胞は目的となる組織・臓器により選定すべきかあるいはどの細胞にも分化転換するポテンシャルがあるのかを確認し、臨床応用に際し、より安全かつ確実な細胞源の確保を目指す。具体的にはまず、比較的入手が容易あるいは臨床を想定して患者負担が少ないと考えられる以下のような細胞を用いて、脊髄損傷部への移植を行い、検討する。①口腔粘膜上皮細胞②皮膚線維芽細胞③軟骨細胞④筋細胞⑤神経細胞⑥血管内皮細胞⑦脂肪細胞 さらに本研究では、脊髄損傷のみならず、他の組織・臓器における再生医療にも、各種成熟機能細胞を細胞源として用いることが可能であるか否かについても検討する。
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