2018 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト軍政期ミャンマーにおける宗教NGOの人類学的研究
Project/Area Number |
17H04537
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
土佐 桂子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90283853)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藏本 龍介 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (60735091)
高谷 紀夫 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70154789)
飯國 有佳子 大東文化大学, 国際関係学部, 准教授 (90462209)
斎藤 紋子 東京外国語大学, その他部局等, 非常勤講師 (20512411)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | NGO / 宗教 / 福祉 / 上座仏教 / ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はミャンマーのポスト軍政期における変化の様相のなかで、宗教的背景を持つローカルNGOの活動に着目し、現地調査を通じて、その実態を実証的に明らかにすることを目指すものである。宗教NGOに着目することにより、ミャンマーにおける民主化プロセスの動態を草の根レベルで追い、宗教の社会的布置の変容を解明するという目標を立て、計画を遂行中である。初年度に三つの目標(調査開始、研究課題の明確化、基礎的なデータベースの構築開始)を立て、順調に遂行した。二年度目もそれぞれの目標をさらに深化させた。第一に宗教NGOの本格的調査を開始した。引き続き、調査対象を①宗教マジョリティを核とするNGO(具体的には仏教NGO)②宗教マイノリティを核とするNGO(具体的にはムスリムNGO)③少数民族を核とするNGOという3つに分け、分担者によってそれぞれの担当を定めた。調査に際しては、分担者が対象とする組織を絞り、その組織的特徴と個々の参加者という2側面からとらえることを目標とした。加えて、他の宗教組織との比較の視点も持ち、宗教的側面と世俗的側面を意識化する作業も推進した。第二に国内研究会を通じて、こうした調査成果を共有しあい、相互に議論を深めた。現在のところ、集金・寄進システム、組織化、会員の参与といった共通テーマが挙がっており、伝統的宗教組織と本研究で対象としている宗教NGOの継続性と革新点を明らかにしていく必要性が認識された。第三に国内の宗教NGOやいわゆるNGOがどのように展開しているかといった全体像の把握も必要であるという認識に基づいて、昨年度に引き続き、ヤンゴンを核とするデータベース構築を続けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由は、もともと掲げている三つの目標が順調に進んでいることによる。第一に、宗教NGOの本格的調査を開始した。調査対象としては、上記の①②③の3つに分け、分担者がそれぞれの担当を定めた。また、グループのなかで取り上げる組織をいくつか絞って、集中的に調査しつつある。調査の際には、その組織的特徴と個々の参加者という二側面からとらえようとした。また他の宗教組織との比較の視点も持ち、宗教的側面と世俗的側面を意識化するといった目標のもとに調査を推進している。第二に、国内研究会で第一の成果を通じて、今後議論を展開する視点について絞った。その結果、集金・寄進システム、組織化、会員の参与といった共通テーマが挙がっている。こうした切り口から、従来の宗教組織との比較のうえに、近年結成され福祉活動を行っている宗教NGO、CBO(コミュニティ基盤組織)の特徴を把握する試みを続けているところである。ただ宗教NGOへの関心はまだ研究が始まったところともいえる。理論的貢献については今後も引き続き模索することが必要であり、次年度以降の課題でもある。第三に、より大きな見取り図を共有する目的で、昨年度に引き続き、ヤンゴンを核とするデータベース構築を続けたが、データが得られる箇所では郡レベルで登録されているNGOのデータベース化をほぼ終了させることができた。課題は残しつつも、当初立てた目標のうち、二年目に終了すべき点はそれぞれ達成されていることから、本研究は順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も、この三つの目標をそれぞれ進めていく予定である。第一には調査の継続であり、次年度以降各分担者が対象とする組織について、組織的特徴と個々の参加者という二側面からとらえ、必要に応じて他のタイプの宗教組織や世俗組織との比較を行う。もちろん、宗教NGOの研究はその端緒についたばかりで、理論的深化は重要である。そのため、第二の成果とりまとめを含めた理論研究は重要となる。次年度はひとまずヤンゴン大学で現地人類学者などと国際合同セミナーを行う。ここで、相互の研究を報告し、ラウンドテーブルなどを通じて議論の交換を行い、新たな視点を構築することを試みる。この成果はプロシーディングズとして出版予定である。他方で、それぞれの分担者が調査結果を深めつつ、それをいかに分析するか、理論的支柱を見出すことが課題として残されている。国内研究会でそれぞれ議論を継続するほか、必要に応じて話者を招聘し、研究を進める。第三に、昨年度までに作成したヤンゴン管区のデータベースに、調査を行った組織を加え、データベースを通じて宗教NGOの全貌を把握する。最終的に、宗教NGOに着目することで得られる視点をとりまとめ、日本での書籍出版につなげる予定である。
|