2018 Fiscal Year Annual Research Report
Adaptive diversification of bruchinae seed beetles to poisonous chemical substances in leguminosae: genetic diversity of detoxifying mechanism and utilizing dry seeds.
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17H04612
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 正和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40178950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 義晴 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 卓越教授 (10354101)
徳永 幸彦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90237074)
津田 みどり 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20294910)
中野 伸一 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (50270723)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 種子捕食昆虫 / マメゾウムシ類 / マメ科 / 毒物質 / アレロパシー活性 / 分子系統解析 / EST-SSRマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
嶋田と分担者の中野、連携研究者の大林と伊藤はササイカチマメゾウムシに特異的な核遺伝のEST-SSRマーカー開発を行なった。このマーカー開発技術の論文は国際誌Appl. Ent. Zool.に受理され、さらに、現在国内個体群の遺伝構造解析を進めている。また、嶋田と分担者徳永、伊藤、大林は、中国産アズキゾウムシと日本産アズキゾウムシの交雑実験として、中国産系統を母親にした交雑ラインと日本産系統を母親にした交雑ラインを比較した。多様な乾燥完熟種子を与えて広食能力を調べたところ、交雑ラインは母親をどちらの系統であっても広食能力は半減されたことにより、広食能力は母性効果ではなく核ゲノムの作用であることが分かった。 藤井はモロッコ、バングラデシュ等5か国でマメ科を中心とした植物のアレロパシー活性を検定した。活性の強い植物については、種子、植物体、根などに含まれる成分をGC-MS等を用いて分析した。昆虫や植物に対する有毒性が知られているカナバニン等の非タンパク性アミノ酸等のアレロケミカルが他の生物に及ぼす影響を調べた。 徳永はマメゾウムシ採集についてのABS協定を交渉のために2019年3月に台湾大学のChau-Ti Ting博士を訪問し、その結果、輸入よりも相互に実験個体群を共有する共同研究で合意した。マメゾウムシ実験個体群を用いた学会発表を2件、昨年のインゲンゾウムシのmtDNA配列解明に端を発したゲノム=アッセンブリに関する発表を1件行なった。現在論文を投稿を進めている。 津田は昨年度の実験を追試し、種子捕食昆虫への抵抗性を持つアジア産ツルアズキVigna umbellataをササゲと同時に与えると、セコブマメゾウムシ属で害虫2種とタイ産野生種1種を比較したところ、産下した卵サイズや生存率・発育期間について、タイ産野生種のツルアズキへの適応の差異が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嶋田と徳永、連携研究者の大林で、中国産アズキゾウムシと日本産アズキゾウムシの交雑系統の示す広食能力を調べた結果、純粋の中国産アズキゾウムシ(dxC)は被子植物門で系統の遠い4目で多数が羽化する超広食性であるのに対して、交雑系統の場合、母親は中国産と日本産によらず、交雑系統の広食能力は半減することが分かった。一方で、羽化体重は両交雑系統は日本産(jC系統)の遺伝子が混じっているため体重が中国産 dxCと有意に大きく、広食能力と羽化体重の間にはtrade-off があることが分かったのは、重要な発見である。藤井によるメタボローム解析によって、どの毒物質の代謝が中国産と日本産の遺伝子発現の差異になって現れれているかを特定する。 他にも、津田がタイで発見したツルアズキから羽化した被害虫種の産下した卵サイズに着目した特性の差異は、H30年度の追試で明確になったので、マメゾウムシ類の生活史の進化に関わる重要なデータであることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は以下のように進める方針である。 (1)中国産アズキゾウムシ(dxC系統)と日本産アズキゾウムシ(jC系統)の交雑実験におけるtrade-off の解析・・・両系統を交雑した時に、どちらの系統を雌にして交雑しても広食性は同程度に低下したので、核遺伝子群の作用が決まった。それと同時に、日本産jCとの交雑系統は中国産dxCと比較して羽化体重が大きい。このtrade-offを詳細に詰めるために、P世代(中国産、日本産)へのバッククロスにより選抜実験を施すことで、広食能力と同時に体重も大きくなる両方有利な性質を有するtrade-off の解消の進化実験を計画する。 (2)中国大陸も含めたアズキゾウムシ各地域個体群の分子系統樹作成・・・中国各地で採集したさまざまな系統(計画)と日本各地で採集した系統(こちらはすでに現有)とを対象にCOIやその他のmtDNAを使って分子系統樹を作成し、各地域系統がどの程度の遺伝的距離で互いに関係をもっているかを解明する。中国の温州大学に嶋田研出身が特聘准教授の職を得たので、調査・共同研究がやりやすくなる。同種とはいえ、中国大陸のクレードと日本各地のクレードでの相互の距離を解析したい。 (3)寄主乾燥種子を使った毒物質のメタボローム解析の計画・・・さまざまな寄主乾燥種子をGC-MSのミニ・メタボロームキットを使って、独物質の成分を分析する。これにより、中国産アズキゾウムシが食べて育つ種子で、かつ日本産アズキゾウムシが食べても育たない種子の毒物質メタボロームを対象に、中国産のみが解毒できる代謝パスウェイが絞られてくるはずである。
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Research Products
(15 results)