2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the quantitative evaluation methods of reinforcement factor in farmers' resilience for salinization by disaster and climate change
Project/Area Number |
17H04630
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 忠男 北海道大学, 農学研究院, 講師 (00312398)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 克之 鳥取大学, 農学部, 准教授 (10414476)
生方 史数 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (30447990)
松田 浩敬 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (50451901)
久米 崇 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80390714)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | レジリエンス / 農家家計 / 農村社会 / 灌漑 / 塩類集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,灌漑農業におけるレジリエンス概念の適用ならびにその定量的評価手法の開発を目指すものである。初年度は,「レジリエンス要素の定義を行い,現地調査・観測によりその基礎データを取得する」ことを目標とした。対象地域はタイ王国のパンガー県とコンケン県である。以下に具体的な活動内容の予定と実施成果を示す。 (1)雨季と乾季に2 つの調査サイトを訪問して土壌,地下水等のレジリエンス要素に関する調査を実施する。土壌調査を実施し,水位計等の機器を設置・観測する。成果:コンケン県では観測圃場を設定し,地下水位計・土壌水分計を設置した。また,土壌塩分の現地観測を実施した。パンガー県ではヒアリング調査のみを行うこととした。 (2)農家を訪問し聞き取り調査を行う。次年度のワークショップ開催に向け準備を行う。成果:パンガー県では調査対象者の選定に時間がかかり,聞き取り調査は実施できなかった。一方,コンケン県では2個所の村で地域住民への聞き取り調査を実施し,十分な成果を得た。ワークショップの準備は関係機関と調整中である。 (3)研究協力者の協力のもと各種統計データの収集を行う。(2)と共同で聞き取り調査を行い,農家家計データを取得する。成果:聞き取り調査では,農家家計に関するデータはある程度得られたものの,十分な統計データの収集には至っていない。 以上の調査から,レジリエンス要素として,①地下水位変動と塩分移動の関係,②塩害の程度と住民の対策選択(低収量で持続・放棄・除塩・転作など)における志向性の関係,③選択した塩害対策と副業(場合によっては主業)の家計におけるバランス,などがあり,さらに②の志向性においては,④米価(維持にかかる施策)をはじめとする農産物価格,⑤土壌改良や施肥による増収効果,⑥利用可能な水源の有無,⑦農外雇用の需要,⑧成功事例の存在,などが影響していることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンケン県では予定以上に調査ができ成果も得られたものの,パンガー県では聞き取り対象となる住民(津波によって被害を受けたのちに,そこに残って営農している人,他の地域に移転して農家を継続している人,離農した人)の選定に時間を要したため,聞き取り調査を実施できなかった。また,予算が減額されたことで,どちらかの地域を重点化する必要があり,その結果,パンガー県での連続観測体制を断念することとしたため,十分な成果を得るには至らなかった。 一方,次年度予定していた,伝統的な営農や社会制度から水土の知を収集することについては,今年度の調査で多くの知見がえられた。 以上のことから,若干,研究計画の軌道修正が必要となったが,修正後の計画に対しては十分な成果が得られたと判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
進捗状況にも示したとおり,パンガー県での地下水位等の連続観測体制を断念する必要があったが,現地の聞き取りからも,塩性化被害が継続していない状況にあることから,この変更は研究目的達成に大きな影響は与えないと判断できる。 2年目の目的は,<取得データをもとに農家の家計収入のシミュレーションを行う.また,ワークショップによって農家の水土の知を収集し,レジリエンスを支える社会的・文化的背景を明確にする>ことである。そのために,具体的には以下の3テーマについて調査をすすめる予定である。 テーマ1:前年度同様の調査を行い,不足しているデータを追加で取得する.得られた基礎データをもとに,Hydrus 1D, 2D 等の物理モデルを用いてシミュレーションを行い,農地の除塩とその回復時間について検討する。 テーマ2:ワークショップを開催(2019年2月で調整中)し,塩類化に関する科学的な情報の共有と,地域的な対応策について議論する。また,同時に伝統的な営農や社会制度から水土の知を収集し,それらとレジリエンスの関係について検討を行う。 テーマ3:前年度調査結果をもとに家計調査票を設計し,アンケート(個別聞き取り)調査を実施し,家計収入のシミュレーションを行う。 2年目の総括として,以上の成果を統合し,塩類化による撹乱シナリオを作成し,レジリエンスの定量化を開始する予定である。
|
Research Products
(1 results)