Outline of Annual Research Achievements |
東南アジアにおいて日本の脅威となる豚の越境感染症のうち,豚熱(CSF),アフリカ豚熱(ASF)について病理学的調査を実施した。ベトナムで流行しているCSF発生農場から採取した20-50日齢子豚と母豚の計12頭を病理学的に調べた。共通した剖検所見としては脳の充血、下顎リンパ節の充出血、腸間膜リンパ節の充出血、耳にみられた斑状出血を示し、組織学的には脾臓とリンパ節のリンパ球の著明な減少と充出血は共通所見であった。免疫染色で,脳,扁桃,唾液腺,リンパ節,肺,胃,小腸,大腸,腎臓に,細胞ではリンパ球,上皮細胞,血管内皮,神経細胞に陽性を示した。RNA解析でCSFV遺伝子亜型2.5を示した。さらに日本に最も脅威となるASFは高致死率を示し経済的損失は大きくワクチンもない。8例の急性例を材料とした。病理学的にリンパ節、肝臓、脾臓、腎臓、心臓等の出血と壊死が主な病変であった。免疫染色では全身のマクロファージにASF抗原が陽性で,わずかの肝細胞と腎細胞に陽性がみられた。ASFV 2型の遺伝子型を示した。さらに,豚のASF4例の回復例を論文にした。臨床的には異常はなく血清のASFV抗体は陽性を示した。病理学的にはリンパ組織,肺,心臓など罹患臓器に出血と壊死に対する生体修復反応である線維化が主な変化であった。ウイルス抗原は極少量見られ、定量PCRではASFVは陰性で消失していた。CSF,ASF,高病原性PRRSはリンパ節に出血がみられ,肉眼的,臨床的に類似点が多く,鑑別しなければならないが,今回の結果を含めた病理学的解析により,日本の脅威となる豚の越境感染症の病理発生の違いを知りうる知見を得ることができた。さらに,豚流行性下痢症(PED)は以前から中国やベトナムで大きな問題であった。樹立したELISA系で豚血清の反応を調べ,ベトナムでは持続的にPEDVに強く感染してることを示した。
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