2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H04833
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三木 謙二郎 東北大学, 理学研究科, 助教 (80727090)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中性子多体系 / 荷電交換反応 / 三重水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、同種三核子からなる新しい原子核系を探索し、その構造を明らかにすることを主な目的としている。特に三重水素(3H)やヘリウム3(3He)に対する荷電交換反応によって三中性子(3n)系や三陽子(3p)系を実験的に生成する。 3n系の探索は、三重水素標的に対して荷電交換(t,3He)反応測定の技術を適用することで実現する。本年度は実験の中核となる三重水素標的の開発を中心に推進した。特にサイズ約1cm2、厚さ10-100μm程度のチタン吸蔵型標的の製作を目指して以下を行った。まず、標的製作方法の探索を行った。ここでは、三重水素の代用として重水素を利用した。製作装置の改良を続けるとともに、製作の際のチタンフォイル温度や重水素ガス圧等を変化させて標的の試作を重ね、最終的な重水素吸蔵量が最大化される条件を探索した。最終的に得られた複数の試料に対して、東北大学CYRICおよびFNL施設において成分分析実験を遂行した結果、重水素チタン原子数比D/Ti=1.7の標的が再現性良く製作できていることが確認された。さらに、今後の三重水素を用いた標的製作の為に、真空系の開発も行った。 上記と並行して、3n系の実験と相補的な関係にある3p系の探索実験を遂行した。事前にヘリウム3冷却標的の製作を行った上で、大阪大学RCNPにおいてヘリウム3標的に対する荷電交換(3He,t)反応測定を行うことで、終状態に形成される3p系の励起エネルギースペクトルを取得することに成功した。得られたスペクトルの分布について、インパルス近似に基づく原子核反応理論計算との比較を行ったところ、3p系は陽子が自由に拡散し崩壊するのではなく互いに相互作用を及ぼし合って存在しているという兆候が見出された。さらに、この実験で得られた知見を基に、3n系探索実験での原子核反応確率の予測精度を向上させ、実験計画の改良に繋げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3n系生成実験については、その中核となる標的開発が順調に進み、製作手順が確立されつつある状況である。最終的に三重水素標的を製作する富山大学、利用する理化学研究所と十分な連携関係を維持しながら開発を進めることができている。一方で、3p系生成実験についても、既に実験を成功裏に終えた上、データ解析もほぼ完了し、物理の議論を可能とする段階まで来ている。以上のことから、研究が大きく進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの成果を基にビーム実験用の三重水素標的を製作した上で、実際に理化学研究所において3n系生成実験に臨みたい。標的製作と並行して、実験に必要となる検出器、真空系を整備するとともにビームラインの準備を行う。さらに、既に得られた3p系、今後得られる3n系の実験データを解釈する為の原子核反応計算を、引き続き理論研究者と共に議論・検討していきたい。
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