2018 Fiscal Year Annual Research Report
星間分子から隕石有機物へ:重水素存在度を指標とした分子進化プロセス解明
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17H04862
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00507535)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分子進化 / 水素同位体分別 / 光化学反応 / 熱水反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,低質量原始星IRAS16293-2422で観測された組成を再現した重水素置換メタノール(CH3OH,CH2DOH,CHD2OH,CD3OH,CH3OD),水,一酸化炭素,アンモニアの混合ガスを10ケルビンの反応基板に蒸着し,そこに真空紫外光を供給することで,イエロースタッフと呼ばれる複雑有機物生成作業をおこなった。主要な生成物はヘキサメチレンテトラミン(HMT)であることは昨年度に発表したとおりだが,今年度はHMT以外にも宇宙化学的に興味深い分子,ジペプチドがイエロースタッフ中に含まれれていることを見出した。 ジペプチドはアミノ酸の二量体であり,加水分解によってアミノ酸を生成するだけでなく,種々の化学反応の触媒としての役割が期待されており,分子進化のカギとなる分子の一つである。類似の先行研究でその存在が示唆されていたが,明確なデータは存在せず,本研究で初めて定量的にその存在が確認された。もっとも単純なジペプチドであるグリシンの二量体は,直鎖上のグリシルグリシンと環状のジケトピペラジンの二種類が確認された。複数のジペプチドが検出された。それらの生成量はアミノ酸よりも低かったことから,イエロースタッフ中アミノ酸の起源としては,寄与が少ないと予想される。さらにそれらの重水素置換体が検出されたことから,星間分子の重水素は分子の複雑化にともなって様々な分子に引き継がれていくことが強く示唆された。 液体クロマトグラフを用いたイエロースタッフからのHMTの単離に関して,HMTの標準試薬を用いて単離条件の開発をおこなった。共存するイミダゾールという分子とのピーク分離が大変困難であったが,トリフルオロ酢酸を溶離液に用いることで,最適な分離条件を発見できた。さらに,HMTの加熱装置の導入も完了し,次年度ただちに加熱実験に取り掛かることが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の遂行のみならず,ジペプチドの検出など,研究計画以外の関連成果を挙げられたため。
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Strategy for Future Research Activity |
既存の研究計画にのっとり,実験を進める。
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Research Products
(6 results)