2020 Fiscal Year Annual Research Report
星間分子から隕石有機物へ:重水素存在度を指標とした分子進化プロセス解明
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17H04862
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (00507535)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘキサメチレンテトラミン / 隕石母天体 / 重水素濃集 / 分子進化 / 熱変質 |
Outline of Annual Research Achievements |
隕石母天体上での加熱プロセスにともなうヘキサメチレンテトラミン(HMT)の変化を検証するために,HMTの標準試薬を純金製のカプセルに封入し,300℃で24時間加熱した。その後,加熱サンプルを反応容器から取り出し,それらの元素(炭素・水素・窒素)組成,ならびに炭素・水素・窒素同位体比を測定した。加熱前の元素組成(C:H:N=51.4:8.6:39.9)と比較すると,加熱後は水素と窒素の割合が大きく減少し,C:H:N=61.9:4.1:27.2となった。これから見積もられる加熱後成分の平均的な組成はC5H3.95N1.88と見積もられた。加熱にともなって各元素の安定同位体組成も変化し,炭素は4‰程度同位体的に軽くなったのに対し,窒素と水素はともに同位体的に重くなった。これらの結果は,加熱によって同位体的に重い炭素と同位体的に軽い窒素と水素を含む成分が優先的にHMTから失われることを示した。 3種の炭素質隕石(マーチソン,タギッシュレイク,マレー)からHMTを世界で初めて検出することに成功した。隕石中HMT量は各隕石に含まれる代表的な有機物,アミノ酸に匹敵するほど多かった。隕石母天体上はHMT生成に不利であるため,検出したHMTは太陽系形成以前の星間分子雲環境で生成したと考えられる。HMTは熱水反応によって分解し,アミノ酸や糖の材料となるアンモニアやホルムアルデヒドを生成可能である。従来の説では隕石母天体上でのそれら分子の起源が不明であったが,HMTが分解して両分子が生成し,さらにアミノ酸など複雑分子が生成したと考えるとすべてつじつまが合う。本成果はNature Communications誌にて発表され,隕石有機物の起源・生成メカニズムの解明に重要な情報を提供したとして高い注目を集めた。
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Research Progress Status |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(16 results)