2017 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体・ミトコンドリア膜間領域の破綻に基づくALS病態の統合的理解
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17H04986
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邊 征爾 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (70633577)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 小胞体・ミトコンドリア膜間領域 / SOD1 / σ1受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初の研究計画に従い、筋萎縮性側索硬化症(ALS)における小胞体・ミトコンドリア膜間領域(MAM)の破綻を細胞モデルで実証する実験系を樹立するため、ストレスや原因遺伝子の発現に応じたMAMの状態変化を可視化する方法の構築を行った。分割GFPなどを用いた既存の系においては、その結合の強さから人為的なMAMの架橋が生じてしまう恐れを考え、Alfordらによって開発された二量体化依存性緑色蛍光タンパク質(ddGFP, Kd~=0.01mM)を利用し、MAM特異的に蛍光を生じるddGFP発現用コンストラクトを作製した。これをHeLa細胞やNeuro2a細胞に導入し、予想された細胞内局在を示すこと、および我々がMAMを破綻させることを報告している、変異SOD1の発現やSigmar1遺伝子のノックダウンによって蛍光輝度が低下することを確認した。また、このコンストラクトによるGFP蛍光輝度は飢餓ストレス下では上昇し、逆に富栄養下に戻すことで低下した。これは、既に報告されているMAMの飢餓ストレス依存的な形成とよく一致している。従って、本コンストラクトによるMAMの検出は可逆的かつストレス依存的であることが確認できた。ほとんどの導入細胞で、ミトコンドリアの形態は非導入細胞と比較して大きく変化しておらず、人為的なMAMの架橋の影響が生じていないと考えられた。以上のことから、哺乳動物細胞を用いてALS病態におけるMAM破綻を検証する系が構築できたと考えられる。また、今年度は同時にALS原因遺伝子のクローニングを行い、哺乳動物細胞での発現ライブラリーを構築したので、今後、これらを組み合わせて更なる検証を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画にあったとおり、実験系の構築と今後の検証に必要な発現ライブラリーの準備が完了した。従って、概ね計画通りに順調に進展していると考えられる。今回、樹立した系を用いれば、簡便にMAMの破綻状態を推定することが可能となり、今まで半日近くかかっていたMAMの生化学的単離からリアルタイムでMAMの状態を観察できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ALS原因遺伝子のクローニングにより構築した哺乳動物細胞での発現ライブラリーを組み合わせて、MAM破綻が実際に幅広いALSで共通した病態基盤であるか検証する予定である。なお、今回樹立した系では、検出自体は可能な一方で蛍光輝度が通常のGFPよりも弱いため、分割GFPを用いた系と比較して感度や定量性が低下することが危惧された。人為的なMAMの架橋の恐れを回避しつつ、感度を向上させるため、本年度は並行してddGFPの代わりに分割ルシフェラーゼ(Kd~=0.1mM)を用いて検出を行う、発光バージョンへの改良を併せて行う予定である。
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Research Products
(7 results)