2017 Fiscal Year Annual Research Report
Can trees escape global warming by migrating towards colder areas?
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17H05031
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
直江 将司 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (80732247)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 種子散布 / 垂直散布 / 温暖化 / 鳥類 / 哺乳類 / 動物散布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、結実期によって動物散布植物の垂直散布の方向(種子が低標高に散布されるか、あるいは高標高に散布されるか)が決定されるという仮説の検証を課題の最終目的としている。そのため、温帯で代表的な動物散布システムを用いて、春夏・秋冬結実植物の垂直散布の比較評価を計画している。さらに、文献を利用して植物の垂直分布の時系列変化と垂直散布との対応関係を評価することで、垂直散布が実際の植物の分布変化を駆動しているかまでを明らかにする予定である。 今年度は、果肉を動物に提供する代わりに種子を散布してもらう周食散布植物を主な研究対象とし、結実期と垂直散布の方向の関係を調査した。具体的には、結実時期の異なるカスミザクラ(初夏結実)、ウワミズザクラ(晩夏から初秋結実)、サルナシ(秋結実)を対象樹種として、鳥類と哺乳類の散布種子を糞から回収した。このうちサルナシの哺乳類散布種子について酸素同位体比を測定し、種子の垂直散布距離を求めた。その結果、サルナシの種子は全ての種子散布者において低標高に散布されていることが明らかになった(ツキノワグマ平均-346m、ニホンザル-36m、タヌキ-48m、ホンドテン-227m)。この結果は既に研究代表者らが発表しているカスミザクラの高標高への種子散布とは対照的であり、それぞれの植物の結実期における植物フェノロジー(春夏には山麓から山頂方向に開葉や結実が進み、秋冬には山頂から山麓方向に落葉や結実が進む)が動物の移動を介して影響していると考えられた。種子を動物が食べ忘れることで種子が散布される貯食散布植物については、対象植物のハイマツとブナが十分結実せず、動物の散布種子は回収できなかった。また、垂直散布と近年の植物の垂直分布変化の関係をメタ解析で評価するため、植物の垂直分布の時系列変化を調べた論文を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画について、周食散布植物のサンプリングと垂直散布距離の推定は順調に進めることができた。さらに、周食散布植物の哺乳類散布において、結実期によって垂直散布の方向が決定されるという仮説を支持する結果を得ることができた。また文献収集を予定通り行った。しかし、貯食散布植物については種子が十分に結実しなかったため研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は周食散布植物については、仮説の一般性を確かめるため山地間で垂直散布の比較を行う。またカスミザクラの結実とサルナシの結実の中間の時期に結実するウワミズザクラの垂直散布を評価する。貯食散布植物については今後3年間で豊作の年に当たった際に集中して調査を行う。また、メタ解析のために植物の垂直分布の時系列変化を調べた論文の収集を継続する。
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Remarks |
直江将司、花咲かクマさん温暖化から野生のサクラを守る、季刊森林総研、37巻、2017年、10~11頁 直江将司、陀安一郎、酸素安定同位体を用いた標高方向の種子散布評価、同位体環境学シンポジウム、2017年
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Research Products
(4 results)