2019 Fiscal Year Annual Research Report
骨細胞-感覚神経ネットワークがもたらす骨疾患病態の解明
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17H05104
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
日浅 雅博 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (90511337)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨痛 / 骨細胞 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の骨転移によって生じる骨痛は、腫瘍の進行に伴い高頻度で発生し、患者に耐え難い苦痛を与える。骨痛はNSAIDS やオピオイド系鎮痛薬が効きにくいため、緩和治療には既存の鎮痛薬による治療に加え、骨痛病態を解明し多方向からの集学的アプローチが必要であるが、骨痛病態の形成機構については未だ不明な点が多い。本申請では、骨組織を構成する細胞で大多数を占める骨細胞が、骨内を走行する痛覚神経とコネキシン(Cx)43 介した細胞間小分子輸送ネットワークを構築することに着目し、骨細胞と痛覚神経間で痛みを増悪する情報伝達システムが存在することを明らかとし、これを断ち切ることで効率的な骨痛治療を開発することを目的とした。 これまでに、骨細胞の細胞突起が作るネットワークは、骨細胞同士のみならず知覚神経とも接触し、Cx43によるギャップ結合が介在することを確認した。また、小分子輸送が両細胞間で行われることを見出した。さらに、癌の骨転移骨痛動物モデルとして、E0771 マウス乳癌細胞脛骨移植モデルを作成し骨痛をvon Frey testで経時的に計測したところ、腫瘍の増大に伴い骨痛の増強を認めたが、 Cx43 阻害薬 GAP27 の投与や、骨細胞特異的Cx43ノックアウトマウス(Cx43 cKOマウス)においては骨痛は減弱したことから、Cx43 により構築される神経細胞と骨細胞間ギャップ結合が癌の骨転移骨痛の増悪メカニズムに関与することが考察された。 尚、Cx43 阻害薬 GAP27による明らかな腫瘍増殖抑制効果は見られなかった。現在、Cx43を介して骨細胞と神経細胞間で輸送され、神経興奮を誘導する小分子の候補を絞り込み、骨細胞特異的欠損マウスの作成を行っている。今年度の研究計画で、CRISPR/CAS9システムで当該分子の一端に関してはLoxP配列を組み込むことが完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、これまでに癌の骨転移骨痛モデルを作成し骨痛の評価方法を確立した。また、骨細胞と神経細胞間でCx43を介した小分子輸送が行われることを確認し、これが神経興奮に関与することを明らかにした。加えて、Cx43阻害薬GAP27の投与によって癌の骨転移骨痛が抑制されることを見出すとともに、骨細胞特異的Cx43ノックアウトマウスでは癌の骨転移骨痛が減弱することを明らかにした。また、Cx43 により構築される神経細胞と骨細胞間ギャップ結合で輸送され、神経興奮を誘導する小分子の同定を質量分析によるタンパク質網羅的解析にて試み、候補因子を3つに絞り込んだ。現在、その小分子の骨細胞特異的欠損マウスの骨痛動態の解析を行うために、CRISPR/CAS9システムで当該分子の両端にLoxP配列を組み込んでいる。その一端に関してはLoxP配列を組み込むことが完了した。当初の予定通り実験計画を実施しているが、特異的欠損マウスの作成に時間を要しており、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
Cx43 により構築される神経細胞と骨細胞間ギャップ結合で輸送され、神経興奮を誘導する小分子の骨細胞特異的欠損マウスの骨痛動態の解析を行うために、引き続きCRISPR/CAS9システムで当該分子の両端にLoxP配列を組み込む。 令和2年度はこれに加え、骨関連疾患で感覚神経から分泌される神経ペプチドの骨代謝への影響を明らかにする。癌の骨転移モデルのL3-5 DRGを回収しマイクロアレイ解析を既に行っており、この解析結果から得られた感覚神経から分泌が促進される神経ペプチド候補について、in vitroでの骨芽細胞による石灰化結節形成実験、骨髄細胞を用いた破骨細胞形成実験や骨吸収実験、Real-time PCR、ウエスタンブロットによる分化マーカー発現解析で骨代謝を担う細胞に対する影響を明らかにする。
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Research Products
(13 results)
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[Presentation] Novel therapeutic rationale for targeting HDAC1 and PIM2 in multiple myeloma2019
Author(s)
Takeshi Harada, Asuka Oda, Hiroto Ohguchi, Yohann Grondin, Hirofumi Tenshin, Masahiro Hiasa, Jumpei Teramachi, Masahiro Oura, Kimiko Sogabe, Shiroh Fujii, Shingen Nakamura, Hirokazu Miki, Hirokazu Miki, Kumiko Kagawa, Shuji Ozaki, Teru Hideshima, Kenneth C. Anderson and Masahiro Abe
Organizer
61th ASH Annual Meeting & Exposition
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[Presentation] The role of NLRP3 inflammasome activation in joint inflammation and destruction in rheumatoid arthritis: novel therapeutic approaches with TAK1 inhibition2019
Author(s)
Hirofumi Tenshin, Jumpei Teramachi, Masahiro Hiasa, Asuka Oda, Ashtar Mohannad, Kotaro Tanimoto, Soh Shimizu, Takeshi Harada, Masahiro Oura, Kimiko Sogabe, Itsuro Endo, Eiji Tanaka, Toshio Matsumoto and Masahiro Abe
Organizer
29th Australian and New Zealand Bone and Mineral Society Annual Scientific Meeting
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[Presentation] A progressive auto-amplification loop in TAK1 expression and activation in MM cells2019
Author(s)
Jumpei Teramachi, Shimizu So, Hirofumi Tenshin, Bat-Erdene Ariunzaya, Masahiro Hiasa, Oda Asuka, Takeshi Harada, Ashter Mohannad, Kotaro Tanimoto, Itsuro Endo, Toshio Matsumoto, Eiji Tanaka and Masahiro Abe
Organizer
American Society for Bone and Mineral Society Annual meeting 2019
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[Presentation] TAK1 inhibition effectively alleviates joint inflammation as well as bone destruction in rheumatoid arthritis: Suppression of NLRP3 inflammasome-mediated inflammation and osteoclastic bone resorption2019
Author(s)
Hirofumi Tenshin, Jumpei Teramachi, Masahiro Hiasa, Asuka Oda, Ashtar Mohannad, Kotaro Tanimoto, Masami Iwasa, Bat-Erdene Ariunzaya, Takeshi Harada, Itsuro Endo, Eiji Tanaka, Toshio Matsumoto and Masahiro Abe
Organizer
American Society for Bone and Mineral Society Annual meeting 2019
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[Presentation] TAK1阻害は関節リウマチにおけるNLRP3インフラマソーム誘導性の炎症および骨破壊を抑制する2019
Author(s)
天眞 寛文, 寺町 順平, 日浅 雅博, 谷本 幸多朗, ASHTAR MOHANNAD, Ariunzaya Bat-Erdene, 岩佐 昌美, 原田 武志, 中村 信元, 三木 浩和, 遠藤 逸朗, 田中 栄二, 松本 俊夫, 安倍 正博
Organizer
第37回日本骨代謝学会学術集会
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