2020 Fiscal Year Annual Research Report
The Theory of Microwave-induced Nonequilibrium State and its Application to the Manipulation of Solid/Interfacial Chemical Reactions
Project/Area Number |
17H06156
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
和田 雄二 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任教授 (40182985)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝沢 博胤 東北大学, 工学研究科, 教授 (90226960)
田 旺帝 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (40344501)
堀部 雅弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (30392658)
藤井 知 沖縄工業高等専門学校, 情報通信システム工学科, 教授 (30598933)
吉川 昇 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70166924)
西岡 将輝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (00282575)
中村 考志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (80591726)
椿 俊太郎 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90595878)
福島 潤 東北大学, 工学研究科, 助教 (80634063)
|
Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
|
Keywords | マイクロ波 / 触媒作用制御 / 非平衡反応場 / マイクロ波特殊効果 / マイクロ波プロセッシング |
Outline of Annual Research Achievements |
1)マイクロ波反応のin situ 測定:前年度に引き続いて、in situ でのXAFSや発光分光、誘電率測定を相補的に利用して、マイクロ波照射により固体材料表面で生じる非平衡状態を観測した。具体的には以下のとおりである。<放射光in situ XAFS>マイクロ波照射における金属ナノ粒子の局所温度をDebye-Waller因子から計測する研究に取り組んだ。MW加熱により形成される固体触媒における金属ナノ粒子の局所高温場やその担体依存性を評価した。さらに、operando XANESにより、MW反応中の金属ナノ粒子の酸化状態を追跡し、活性点の選択的加熱による反応促進効果を実証した。<in-situ分光分析>TiNコーティングメカニズムを明らかにした。N2, N2+励起による表面改質と、スパッタによる堆積により、窒化物傾斜機能コーティングが達成されることがわかった。また、マイクロ波照射下In-situ XRDと顕微サーモグラフィの測定により、急速昇温下での材料合成と界面加熱による反応界面へのエネルギー供給を実証した。<in-situ 誘電率測定>マイクロ波照射中の誘電的特性マイクロ波照射中の共振スペクトルの中心波長と半値幅を自動計測する技術を開発し、加熱中の誘電率、誘電損率をリアルタイム表示する装置として完成させた。本装置を利用し、樹脂ペレットのマイクロ波乾燥工程中の水分含有率のその場観測に成功した。 2)新触媒反応への応用:周波数や共振状態を精密に制御したマイクロ波を照射することにより、メタンやバイオマスの触媒的な改質反応が促進されることを見出した。 3)新材料合成反応への応用:通常加熱プロセスではできない新奇バルク磁性半導体の合成、および異常原子価Sn2+含有新規誘電体の作製を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画に基づいてマイクロ波照射中の非平衡状態を観測する方法論として、これまでのin situ XAFS, Raman, 発光分光に加え、バルク試料の観測に適したin situ XRD, および誘電率測定法を確立した。これにより、マルチスケールでの非平衡状態を観測する方法論が整備された。これらの手法を用いて、マイクロ波による非平衡状態の観測を継続的に進めるとともに、触媒反応や材料開発手法へ展開を図り、以下の成果を得た。 1) マイクロ波反応のin situ 測定:通常加熱とマイクロ波照射における触媒をin situ XAFSにより比較し、活性点である金属ナノ粒子(Pt, Pd, Ru, Niなど)の局所的温度をけ計測した。EXAFSから得られるDebye-Waller因子から、定量的にナノ粒子の局所温度を系統的に評価した。粉末スケールでの空間分解能を達成するため、新たに顕微レンズ系を整備し、900 ℃以上の温度場における粉末間の選択加熱、および粉体の接触部分の界面加熱をより明確に捉えた。マイクロ波加熱中の共振スペクトルを自動記録・解析する技術を確立し、リアルタイムで誘電率、誘電損率を表示できる装置を開発した。 2)新触媒反応への応用:触媒のマイクロ波吸収機構を明らかにするため、種々の金属/セラミック複合体の複合導電率および複合誘電率を測定し、導電率がパーコレーション組成およびその金属粒子径依存性を解析した。金属粒子間、および酸化物粒子間での電場集中をシミュレーションし、還元過程の加速を評価した。これらの知見に基づいて、バイオマスやCO2を資源化する触媒反応系の開発を進めている。 3)新材料合成反応への応用:上記の結果に基づいて、通常加熱プロセスではできない新奇の磁性半導体および誘電体の作製を、順調に進めつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) マイクロ波反応のin situ 測定:in situ XAFSやラマン分光、TG/DTA、誘電率測定を組み合わせた、複合計測技術の構築を進める。リアルタイムで得られた結果をもとに、マイクロ波照射方法を動的に可変することで、化学反応等の動的制御が有効であるか検証する。基礎的共通原理を見出すことでマイクロ波により生じる熱的非平衡状態の形成機構の解明を進める。これらのin situ 観測の結果から、マイクロ波によって固体表面あるいは固体バルクに生じる非平衡状態の学理の確立を進める。金属粉末のマイクロ波加熱は、変動磁場により生じる誘導電流によるジュールが主な損失機構であるが、粒子径がナノサイズになると、誘導電流の生成効率が悪くなる。光学領域ではナノ粒子が誘電性を有し、マイクロ波電場により良好に加熱されることが報告されているが、これらの点に注目し、金属粒子間のマイクロ波電場集中に及ぼす、粒子径/粒子形の影響などについて詳細に調べ、当該学理を確立する。 2)新触媒反応への応用:前年に引き続き、マイクロ波によって誘起される非平衡状態を活用した、CO2やバイオマスなどの炭素資源の触媒的変換技術の開発を進める。さらに、幅広い応用事例について蓄積することで、固体・界面化学反応のマイクロ波制御の有効性を示す。 3)新材料合成反応への応用:マイクロ波吸収能の違いを活かした選択加熱・界面加熱を利用して、V、W含有新規材料の合成に展開する。また、Nb元素などをキーエレメントとしたSn系新奇磁性半導体の作製を行う。さらに、マイクロ波印加中その場XAFS、XRDおよび共振周波数観察などを駆使しながらマイクロ波材料合成における非平衡条件を明らかにする。以上の研究を進め、マイクロ波非平衡高温場とその制御による材料創製の学理を構築する。
|
Research Products
(53 results)