2020 Fiscal Year Annual Research Report
An Integrated Multi-scale Approach for Studying Cyanobacterial Circadian Clock System
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17H06165
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
秋山 修志 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 教授 (50391842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 悟 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 専門業務員(任常) (10354888)
上久保 裕生 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20311128)
古池 美彦 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (70757400)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 概日時計 / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
【①周期変異体、温度補償変異体のスクリーニング】In vitroスクリーニング系(Ouyang et al. Int. J. Mol. Sci. 2019)を用いて200変異体を解析し、多数のATPase変異体およびATPase温度補償変異体を取得して、②~④の実験に供した。並行してin vivoスクリーニングを実施し、超短周期(0.6 d = 15 h, 60%)から超長周期(6.6 d = 158 h, 660%)にわたるリズムを表出せしめる同一サイト(Tyr402)点変異群を発見して公表した(Miwa et al. PNAS 2020)。 【②固有振動数の分子内・進化系統樹上マッピング】KaiCの進化系統樹に基づき、現世型および祖先型KaiCの機能や構造を解析した。KaiCを中核とした計時システムの進化過程を、振動性、周期長、温度補償性などの様々な観点から評価した(論文執筆中)。 【③固有振動数を規定するATPase/リン酸化構造基盤の解明】X線結晶構造解析を用いて、KaiCのリン酸化サイクル全体をカバーする原子分解能構造基盤を解明するとともに(9件をデータベースに仮登録)、理論化学計算を援用してATPase/リン酸化共役機構を可視化した(論文投稿中)。 【④温度補償制御の解明】野生型KaiCと温度補償変異体KaiCの中性子準弾性散乱を測定し、温度補償能との因果関係が見込まれるKaiCの非凡な内部運動を発見した(論文投稿中)。 【⑤液中における動的構造解析】 前年度に引き続き、KaiC-KaiA/Bの相互作用動態についてマイクロ流路型自動サンプリング装置を用い、連続滴定X線溶液散乱測定を用いて評価した。特に本年度はKaiCのリン酸化に依存したKaiBの結合動態について解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目①に関する成果として、600%の周期長変化を示す同一サイト(Tyr402)点変異群の発見(Miwa et al. PNAS 2020)が挙げられる。温度補償能と大規模な周期長変化を同時に扱うことができる発振モデルは皆無であり、これを機に、既存モデルの更新もしくは根本的な書き換えを迫られるであろう。In vitro変異体スクリーニングについても順調に進捗しており、予定していた実験を期間内に終えることができる見込みである。 研究項目②と③については、当初の目標を上回る新発見があっただけでなく、更に深い奥行きと広がりを感じさせるものであった。各研究項目に対応する論文については、一部が鋭意執筆中であるが、それ以外は権威ある国際学術誌に投稿中である。 研究項目④に関しては、温度補償能と揺らぎの因果関係を示唆した昨年度の予備実験にヒントを得て、複数の温度補償変異体を用いた中性子準弾性散乱実験を実施した。その結果、変異体ごとに内部運動の温度依存性が異なることが明らかとなった。これはKaiCの温度補償性のメカニズムを明らかにする手掛かりとなる結果であり、早急に論文化を進めている。 研究項目⑤に関しては、KaiAとKaiCの相互作用に関する実験を完了して論文を執筆中である。KaiBとKaiCの相互作用については、リン酸化・脱リン酸化KaiCいずれも10時間程度の間に単調に見かけの分子量が増加し、最終的に異なる分子数のKaiBが結合することが明らかとなった。 各研究項目の進捗状況は良好であり、その一部では、当初の目標を上回る成果も得られているが、現時点で論文投稿中の案件が含まれることを総合的に勘案し、「おおむね順調に進展している」として自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き前述の5項目について研究を継続する。②進化系統樹上におけるωの分布図、および③ATPase/リン酸化構造基盤、④温度補償制御の解明については、研究成果を論文発表する。①変異体スクリーニングは順調に進捗しているので、今のペースと質を堅持して研究を進める。⑤液中動的構造解析は、これまでの結果を基にKaiC-B/Aの3種混合状態の結合動態の評価を行う。
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Research Products
(11 results)