2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H06166
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
相賀 裕美子 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (50221271)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / 性分化 / ES細胞 / キメラ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖細胞の雄性化に必須な因子、Nanos2-DND1を用いて、培養細胞系で、これらの因子の機能を再現する系の構築を試みた。NIH-3T3にこの2つの因子をTET-ONで誘導可能な形で導入したところNanos2-DND1は両者が存在する時にのみ、P-bodyに観察された。またMS2系を用いて、同定済みの標的RNA、Dazl, Sohlh2が3'-UTR依存的にP-bodyにリクルートされることを確認し、この細胞系で、少なくとも、標的RNAのP-bodyへの局在を指標にして、標的遺伝子のスクリーニングが可能であることが明らかになった。そこで、これまでに絞り込んだ標的候補遺伝子の3'-UTRを用いて検討したところ、いくつかの遺伝子が、P-bodyに局在することが観察された。また、生殖細胞の性分化をより詳細に解析する目的で、正常発生胚及びNanos2欠損胚のシングルセル解析を行った。その結果、多くの性分化関連遺伝子群の挙動が明らかになった。 一方、雌性化に関しては、SMAD4を欠損する生殖細胞のRNA-seq解析により、SMAD4の下流遺伝子を候補因子として絞りこんだ。またこれらの遺伝の機能解析の系としてキメラ解析を、計画していたがXX-ES細胞が非常に不安定で、キメラ解析に使用できないことが判明した。そこで、すでに実績があるXO-ES細胞を使用することにした。この細胞は、キメラ解析可能であるが、すべての必要な遺伝子を導入する必要があり、Cas9系を利用できるにしても利用できる細胞を構築するには時間がかかる。特に条件付きノックアウトにするためには、生殖細胞特異的な遺伝子にCre-ERTを導入する必要がある。現在、作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雄性化に関わる分子機構の解析は、培養細胞系の確立や、キメラ解析系が順調に機能するため、計画は順調に進んでおり、当初計画していなかった、シングルセル解析を導入して、さらに解析を深めることができた。一方、雌化遺伝子(性決定遺伝子)の解析系としてもキメラ解析を計画していたが、X染色体が2本あるXX-ES細胞が非常に不安定であることが、他の研究者により報告された。我々も、実際にキメラ作成効率が著しく悪いことを確認し、すでに計画して作成したXX細胞(遺伝子マーカーをもち、生殖細胞特異的Cre-ERTを持つ細胞)が使用できないことが判明した。したがって、計画変更を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
生殖細胞の性分化の解析に、ES細胞の誘導系は、強力な武器になるが、我々が目指す、性決定機構に関わる遺伝子を同定するには、in vivoの解析が必須である。そこで、一番の問題は、やはり、XX-ES細胞の不安定性であり、そのために、解析可能なES細胞の準備に一番時間を要する。H30年度に準備したXO-ES細胞をもちいて、速やかに解析を進めたい。無論、標的候補が生殖細胞特異的遺伝子であれば、条件付きノックアウトは不要であるため、現在も解析をおこなっている。また標的遺伝子の絞り込みがこれまでの解析では不十分であるため、シングルセル解析をおこない、より確からしい候補遺伝子の絞り込みを行う必要がある。
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Research Products
(16 results)