2017 Fiscal Year Annual Research Report
化学分析に基づく飴出し法の最適化および伝統的な藍の再現
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17H06670
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
松原 亜実 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 助手 (20808232)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 藍の飴出し / 藍の顔料化 / 化学分析による飴出し藍の組成 / 古典技法による顔料化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では伝統的な藍の顔料を抽出することを目的とする。地域ごとの藍の色味の検証も行う。化学染料でなく天然の藍染布から抽出する必要があるため、現地を訪れ収集することが求められる。 ◆国内における素材の収集(藍染布)藍染は日本、世界各地で行われているが地域により染め方も異なる。例を挙げると日本本島で行われる藍染はタデ藍の葉を発酵処理して「スクモ」をつくり、それを建てて染めるという方法が昔から行われてきた。一方でインドや、沖縄地方の熱帯、亜熱帯地域では、古くから沈殿藍、泥藍と呼ばれる手法で染められ、それぞれ色味に違いがある。29年度ではスクモで染められている島根の藍染め糸を収集し、また沖縄を訪れ伝統的な手法で藍染めを行う工房を視察すると同時に沈殿藍で染められた裂を入手した。 ◆沖縄県立芸術大学での学会発表 また沖縄県立芸術大学で行われた琉球絵画の学会に出席し、琉球古典絵画の絵画技法と用いられた色材の見識を深めるとともに、琉球藍についての意見を交換する貴重な機会となった。 ◆藍の飴だし抽出試験 様々な抽出試験を行うために、必要な道具や備品を購入し入手した藍染め糸・裂の抽出試験をそれぞれ行った。抽出時の石灰や水飴の配合は統一した。その後、和紙と絹に抽出した藍を塗布しサンプルを制作した。このときは膠をてん料として加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内(島根・沖縄)の藍染め裂・糸の収集を行った。また現地の工房を視察し琉球藍について知見を広めるとともに沖縄県立芸術大学で行われた琉球絵画の学会に参加し、現地の研究員の方との意見交換をおこなった。 収集した藍染め糸、裂の飴出し試験を行った。和紙と絹に抽出した藍を塗布しサンプルを制作した。このときは膠をてん料として加えた。
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Strategy for Future Research Activity |
◆飴出し法がどのような化学変化のなかで抽出されるのかを解明 飴出し法では石灰、水飴のどちらかが欠如してもこの変化は起こらず、藍の抽出も行えない。この時に起こる化学変化を解明しデータとしてまとめる。 ◆石灰や水飴の他素材への置き換え実験 化学変化の解析により導き出されたデータをもとに、組成が類似する他素材での置き換え実験を行う。より美しい藍の抽出可能な素材と配合を繰り返し選定し記録データを作成する。 ◆不安定な藍を効率よく抽出するための実験 置き換え実験の中で最適だと導き出された材料を用い、配合や手順を変えより効率的な方法を検討する。◆海外を中心とした藍染め糸・裂の収集 ◆収集した藍染布と石灰、水飴による最適化実験とデータの編纂 実験を重ねていく中で発色、透明度の最も高くなる工程、分量を導き出しデータとしてまとめる。 ◆研究報告書・サンプル作成および研究成果の公表と発表 最終的には、研究報告書、色見本サンプルを作成し、研究協力者らの所属学会、美術館でのワークショップなどをはじめとする公開研究会にて発表を行う。また研究で得られた結果を共有し、役立てることを目標に、進行状況や技術工程を含めた研究成果を広く一般に公開するためにホームページやSNSを利用して公表していく。
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