2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規機能性脂肪酸の上皮バリア機能強化による歯周病予防・治療法の確立
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17H06701
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松田 由実 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (30804554)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 歯周病 / 機能性脂肪酸 / 上皮バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、ヒト歯肉上皮細胞epi4を各種機能性脂肪酸(HYA, HYB, HYC)で前処置した後、歯周病原細菌P. gingivalisにて刺激することで上皮バリア機能傷害を誘導し、タイトジャンクション関連分子の発現解析、細胞透過性解析を行った。結果から、機能性脂肪酸HYAが、P. gingivalisによる細胞間接着タンパク質(E-cadherin, β-catenin)の分解を抑制することが示された。また、トランズウェルとFITCデキストランを用いた細胞透過性解析から、HYAの前処置がP. gingivalis刺激により増加した透過性を有意に減少させることが分かった。このことから、機能性脂肪酸HYAが歯肉上皮細胞においてP. gingivalisによるバリア機能低下に対して抑制的に働くこと、すなわち歯肉上皮バリア機能保護作用を有することが示唆された。 次に、上記で示された歯肉上皮バリア機能保護作用が、脂肪酸受容体GPR40を介した反応であるかを検証するために、同様の実験系に対してGPR40阻害剤GW1100の添加を行った。その結果、細胞透過性が亢進したことから、HYAはGPR40を介してバリア機能保護作用を持つことが示唆された。 最後に、機能性脂肪酸による歯肉上皮バリア機能修復作用の解明のために、コンフルエントに培養したepi4に模擬的な傷を付与し創傷治癒機能を解析するスクラッチアッセイを行った。予備実験から、機能性脂肪酸が創傷治癒を促進するという仮説を立てたが、この実験系では創傷治癒を抑制するという結果が得られた。結果の再現性の検証と考察を行うと共に、歯周病治癒モデルマウスを用いた検証を計画している。 以上の結果は、機能性脂肪酸による歯周組織強化をターゲットとした新たな歯周病予防・治療法の可能性を示したという点で意義深いものであると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、機能性脂肪酸の歯肉上皮バリア機能の保護・修復作用を検証し、歯周病予防・治療へ応用することを目指している。これまでの実験から、歯肉上皮バリア機能保護作用については、計画通りに検証が進み、機能性脂肪酸HYAがGPR40を介して歯肉上皮バリア機能保護作用を発揮することが示された。一方、歯肉上皮バリア機能修復作用については、予備実験で得られた結果から予測したものとは異なる結果となり、その作用を実証することができなかった。 しかし、本研究により初めて機能性脂肪酸の歯肉上皮バリア機能への作用が明らかとなり、歯周病予防・治療へ繋がる結果を示すことができたこと、大幅な計画の変更をせずに予定通りにモデルマウスを使用した実験へ進むことができることから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、in vitro実験によって示された機能性脂肪酸の歯肉上皮バリア機能保護・修復作用が、歯周炎の病態に及ぼす影響をin vivo実験にて検証する。 まず、結紮誘導歯周炎モデルマウスに対する各種機能性脂肪酸投与実験を行い、歯周病予防効果を検証する。具体的には、8週齢のC57BL/6マウスをHYA, HYB, HYCのそれぞれを添加した飲水で飼育し、7日目に上顎第二臼歯を5-0絹糸にて結紮することで歯周炎を誘導し、14日目に各種解析を行う。解析事項は、通法に従って作成した歯肉組織のパラフィン切片をH-E染色し、上皮構造の破壊および炎症の程度を評価する。また、タイトジャンクションタンパクに対する抗体を用いて免疫染色を行う。一部の個体からは、歯肉組織サンプルを採取し、RNAおよびタンパク質を抽出しタイトジャンクション関連分子の発現を解析する。その後、余剰な軟組織を可及的に除去し、実体顕微鏡を用いてソフトウェア上で第二臼歯のセメント-エナメル境から歯槽骨頂までの面積を計測し歯槽骨吸収レベルを評価することで、歯周病の重症度を決定する。 次に、実験的歯周炎の修復過程に対する機能性脂肪酸投与の影響を歯周炎治癒モデルマウスを用いて検証する。申請者は、結紮によって誘導された歯周組織破壊および炎症が、結紮糸を除去すると修復に向かうことを予備実験にて確認している。そこで、9週齢のC57BL/6マウスの上顎第二臼歯を7日間結紮し実験的歯周炎を惹起した後に、結紮糸を除去し、各種機能性脂肪酸添加飲水下でさらに7日間飼育し、組織修復の程度を上記と同様の方法で解析することで、機能性脂肪酸による歯周病治療効果を検証する。 得られた結果について日本歯周病学会学術大会および国際歯科研究学会にて発表し、国内外の研究者と討論する。また、最終的には国際誌に投稿して成果を世界に問う。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Periodontopathic bacteria increases the severity of collagen-induced arthritis by affecting gut microbiota.2017
Author(s)
Yamazaki K, Sato K, Takahashi N, Kato T, Matsuda Y, Yokoji M, Yamada M, Yamazaki K, Nakajima T, Ohno H
Organizer
Pg Melbourne, Melbourne
Int'l Joint Research
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