2017 Fiscal Year Annual Research Report
Continued research on social vulnerability: Cases from Oshika peninsula (Miyagi Prefecture) and Aso (Kumamoto Prefecture)
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17H07083
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
ヴィルヘルム ヨハネス 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (00805004)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 社会的脆弱性 / 入会 / 行政史料 / 社会制度変容 / 災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は主に次の二つのケース・スタディーを社会的脆弱性の観点から行ってきた。即ち、宮城県牡鹿半島における沿岸漁業の復興と阿蘇外輪の社会秩序と自然資源利用の変貌である。宮城県牡鹿半島のケースは2002年から続けてきた沿岸漁民社会の調査であり、東日本大震災以来、沿岸漁業の再建を中心に、水産特区といった新たな漁業権制度の導入を毎年現地でフォローし続けた。他方で阿蘇外輪は、約50年前に始まり、2014年から取り組みが始まったウィーン大学の阿蘇調査と深く関わっており、何れのケースも中・長期的な地域社会調査である。 本調査は、社会的脆弱性をフレームワークとしており、具体的に、災害や社会経済的な要因によって危機的状況に置かれた集落の住民がどの様に危機的な状況を乗り越えていくかを対象としている。また、社会的脆弱性のコンセプトには、自然災害の様に物理的な要素だけではなく、制度・社会・経済などといった変容要素も含まれている。 宮城県牡鹿半島に関しては、2017年11月に行った現地調査の聞き取りで予想以上の情報が得られたため、研究計画全体に関して若干、阿蘇のケースに重点を置くように調整した。 阿蘇地域においては、これまで新たに多くのインフォーマントや研究者との連携が強化でき、特に2018年夏に西手野で予定しているサーヴェイでは日本の専門研究者が立ち会うことも予定に入れている。一方で、ウィーン大学東アジア研究所日本学科との共同研究も順調に継続でき、次年度も継続する予定がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の牡鹿半島と阿蘇地域における社会的脆弱性の継続調査は本年度中計画していたものがそれぞれ、予定していたものを概ね達成できたほか、調査中に新たな問いも浮上してきたため、予想以上の成果が得られた。中でも、牡鹿半島で予定していた水産特区に関わる実地調査は新たな設置が予定されていないため、予想よりも短時間で済み、H30年度の実地調査は一回で済みそうである。一方で、阿蘇での調査は天候によって中々野焼きや屋外での観察が行えなかったものの、現地において様々な新たな情報を取得できた。 中でも、明治30年前後に行われた原野の払い戻しに関する大変貴重な史料(現地での執行に係る議事録などの行政資料)を阿蘇神社にて発見でき、年度末から現在まではそれらの複写と整理に取り組んでいる。また、この行政資料がなぜ阿蘇神社に保管されているのかも興味深い。これらの史料の検証は近代国家形成において現地住民の自治に関わる重要な史料であると認識しており、研究全体の新たな側面として浮上したことは大変ありがたい。 また、ウィーン大学で2017年11月に行われた現代日本社会科学研究会や農村計画学会、社会分析学会などにおいても一時的な調査結果の発表が行えた。 一方で、ウィーン大学東アジア研究所日本学科との共同研究も順調に継続でき、現在は夏にウィーン大学生10名のサマースクールにおいて予定している共同調査の調整にあたっている。また、阿蘇神社の史料複写の作業も夏までに終了させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】において記した通り、2018年の夏にウィーン大学生10名の協力の下、ウィーン大学東アジア研究所日本学科との共同研究として西手野地区の現状に関するサーヴェイを行う予定である。その調査では、1968年の第一回のウィーン大学阿蘇調査で得られた西手野地区の情報を出来るだけ現在の状況と照らし合わせられる様に聞き取りを行う予定である。サーヴェイでは本研究の社会的脆弱性に関わる諸質問も取り入れることを予定している。 研究成果として牡鹿半島に関しては査読された論文を仕上げることが出来、阿蘇に関しては秋までに英文で日本の近代化における入会制度と地元住民にスポットを当てたものを予定している。 秋までに概ねの調査を終了させて、2019年3月まで、得られた情報の整理と報告書・論文などといった文書作成に深く取り組む予定である。
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