2017 Fiscal Year Annual Research Report
中国官僚社会の特質とその変容―近代初頭における罰則規定と人事査定を中心に
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17H07195
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Research Institution | Tama University |
Principal Investigator |
水盛 涼一 多摩大学, 経営情報学部, 准教授 (20645816)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 地域社会 / 地方官僚社会 / 官僚制度 / 近代化 / 薬物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中国社会の根幹をなす官僚制度の維持につき、基層・中級官僚への人事査定や懲罰から迫ったものである。その過程では、従来まったく検討の対象とならなかった中央政府や地方官庁作成の資料群を活用した。また、二年間という短期分析の格好の対象として、アヘン吸引など官僚の寛怠に対する人事査定処分を追った。なお、清朝(1636年~1912年)では、アヘン戦争(1840年発生、1842年に南京条約調印)敗戦ののち国民へアヘンが広く流通したと言われている。しかしその間にも、清朝政府は少なくとも官僚に対し酒・煙草そしてアヘンを“嗜好”として人事査定における処罰対象とし、国民むけにも“嗜好”からの離脱を勧めていた。こうした先行研究に触れられない清末の“嗜好”と官僚査定の実態、また“嗜好”離脱を目指す公的機関の変容を通し、当時の中国社会の様相や倫理の在り方を解明したものである。 その上では、予定どおり河北省地方官庁の出版した新聞『北洋官報』(全89冊、天津古籍出版社、2014年12月、日本未招来の貴重書)を始めとする研究遂行に必要な書籍を購買したほか、中国の北京市、上海市、浙江省杭州市を訪問し、東洋文庫(東京都文京区)、中国国家図書館(北京市)、上海図書館、浙江図書館(杭州市)で資料調査を行い、また国内学会で一回(仙台での東北中国学会にて「近現代中国における標語宣伝と出版活動」)、国際学会で二回(北京での第八届中国古文献与伝統文化国際学術研討会にて「晩清中央官員及其実態」、また杭州での江南史研究工作坊「宇宙・礼教・学術」にて「晩清時代満族的統治思想」)の研究発表を行うことができた。またアヘン戦争の当事者となった林則徐、その後のアヘン政策にも携わった袁世凱について評伝を執筆した(清水書院『悪の歴史』シリーズ)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究推進と平行して地方官僚データベースを作成している。資料読解・データベース作成は思いの外に進展し、幾度かの発表を行うことができるほどに材料を集めることができた。この発表数、またその内容からすれば「当初の計画以上に進展している」といえる。 しかし世界各地の図書館での資料収集やデータベースの展開については、鋭意作成を進めているとはいえ、対象となる資料の膨大な内容からすれば、未だ端緒についたばかりに過ぎない。すでに形成し得ている中国での人脈を生かして今後さらに資料収集に努力すること、またその間にさらにデータベースを充実させることが求められよう。 そこで「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨平成二十九年度は国内では東京、国外では中国の上海や北京・杭州の各図書館を訪問することができた。また今三十年度は天津市や広東省広州市の訪問を検討している。日中に残された膨大な地方官僚関係文書を捜索・読解しデータベースを構築するためには、なお多くの調査研究が必要である。その上で国際学会での研究成果公開を行うべくなお努力していきたい。
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