2018 Fiscal Year Annual Research Report
生理活性化合物の新規標的タンパク質同定法の開発と植物シグナル伝達物質受容体の解明
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17J03994
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
穴吹 友亮 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 標的タンパク質 / 光親和性標識法 / クリック反応 / 蛍光基 |
Outline of Annual Research Achievements |
生理活性化合物の標的タンパク質同定のためには、標的タンパク質を精製し、アミノ酸配列解析に供することが重要である。ビオチンなどの検出基で修飾した生理活性化合物を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる標的タンパク質の精製は多くの研究例がある。しかし、本方法では非特異的に吸着されたタンパク質の混入や回収率の低さという問題があり、標的タンパク質のアミノ酸配列解析を妨げる要因となっている。そのため、この問題を解決した手法を開発できれば、正確でより簡便な標的タンパク質同定が可能になる。そこで、本研究では純度が低いサンプルにおいても標的タンパク質の正確なアミノ酸配列解析を可能にするという観点から、蛍光基を利用した新規な標的タンパク質同定法の開発を研究テーマとした。新手法では、これまでの研究成果を基礎とし、生理活性化合物の化学修飾を最小限に止めたアジドプローブおよびリンカーを用いて蛍光基を標的タンパク質に導入する。リンカーは、蛍光基であるクマリン、クリック反応に必要なアルキン、標的タンパク質との共有結合形成に必要なジアジリンを有するように設計した。当該年度は蛍光基を有するリンカーの合成に取り組んだ。平成29年度に合成を行った合成中間体を用いて、合成を進めた。三臭化ホウ素による脱メチル化反応、ウィッティヒ反応、エステル加水分解、および脱水縮合反応という4つのステップにより、蛍光基を有するリンカーの合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
もし当初の計画通りに研究が進んでいれば、平成30年度内に蛍光基を有するリンカーの合成を終え、モデル実験の結果から新手法が生理活性化合物の標的タンパク質同定に有効であることを示す予定だった。しかし、蛍光基を有するリンカーの合成に予定よりも時間を割いてしまったため、モデル実験を行うことが出来なかった。しかし、モデル実験に必要な化合物の合成は達成できたため、モデル実験には早急に取りかかれる予定である。そのため、進捗は「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
新規な標的タンパク質同定法の有効性を確認するため、モデル実験に着手する。モデル実験では、植物ホルモンであるジャスモン酸生合成酵素の1種であるアレンオキシドシンターゼ(AOS)とAOS阻害剤の既知の相互作用を対象とする。AOS阻害剤由来のアジドプローブは過去の研究で合成したものを用いる。組換えタンパク質PpAOS1を過剰発現させた大腸菌由来の粗タンパク質液とアジドプローブおよびリンカーを設計した手法に従い反応させる。反応を行った粗タンパク質抽出液を電気泳動に供し、泳動後のゲルを切り出すことで標的タンパク質の粗精製を行う。本サンプルはトリプシン消化後、蛍光ピークを指標としたnano-LC-MS/MSによるアミノ酸配列解析に供する。本解析で同定したペプチドのアミノ酸配列がPpAOS1由来のものであれば、開発した新手法が標的タンパク質同定に有効であると示される。 また、開発した新手法を用いて12-オキソファイトジエン酸(OPDA)の受容体探索を行う予定である。OPDAは植物ホルモンの一種であるジャスモン酸の生合成中間体であるが、ジャスモン酸とは異なる独自の生理作用を有することが知られている。一方で、OPDAの詳細な作用機序は未だ解明されていない。そこで、本研究ではモデル植物であるシロイヌナズナにおけるOPDAの標的タンパク質同定を行い、作用機序解明に着手する。
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Research Products
(3 results)