2019 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパにおける近代的書物形態の成立と発展のプロセスに関する研究
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17K00454
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
雪嶋 宏一 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00507957)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ページ付け / 16世紀印刷本 / パリ / リヨン / ロンドン / ボローニャ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は本務校から特別研究期間を取得して、4月~9月(一時帰国あり)は英国のロンドンに滞在し、ロンドン大学ウォーバーグ研究所で訪問学者として研究に従事した。10月~3月まではフランスのリヨンに滞在して、リヨン大学情報図書館学高等研究院で訪問学者として研究を行った。英国では英国図書館、オックスフォード大学ウェストン図書館、ケンブリッジ大学図書館を利用し、フランスではリヨン公共図書館とパリのフランス国立図書館で16世紀前半にパリとリヨンで出版されたページ付け印刷本の調査を行った。ロンドンでの調査ではさらにドイツ、低地諸地方(オランダ、ベルギー)、スイス、イタリアで16世紀に刊行されたページ付け印刷本の調査を行った。リヨン滞在時にはイタリアのフィレンツェ国立図書館、ボローニャ大学図書館、ボローニャ中央図書館アルキジンナジオ、ラヴェンナのクラセンセ図書館でボローニャの16世紀印刷本の調査も行った。 調査によって、フランスにおけるページ付け印刷の開始と発展の過程を解明した。フランス最初のページ付け本はリヨンで1510/11年刊行されたローマ古典(ヴェネツィア版の海賊版)であり、パリ最初のページ付け本は1519年に刊行されたフッテンの著作であった。これらは2017年に行った調査では発見できなかったもので、ロンドン、リヨンでの現物調査で初めて発見できた。また、ジュネーヴのページ付け調査でカルヴァン著作にページ付けが行われていたことが判明した。 英国のページ付け印刷はロンドンで1531年に始まったが、データベース調査でページ付け本とみなした16世紀前半ロンドン出版の多くが、現物調査を経てページ付け本ではないことを確認し、ロンドンのページ付けの発達は16世紀後半以降であったことが判明した。 ロンドンとリヨンで研究発表を行い、また、ラヴェンナでイタリアの研究者と研究打ち合わせを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で最も困難が予想されたのが、16世紀フランス印刷本の調査であった。フランスでは16世紀にヨーロッパで最も出版が盛んであり、予備的調査ではリヨンが最大のページ付け本出版地とみなされていたことから、調査対象が膨大であり、調査に相当の時間を要することが予測された。それらの印刷本は主にフランスと英国に所蔵されている。2019年度に1年間英国・フランスに滞在して、各地の図書館でそれらのページ付け本の現物調査を行ってデータを作成することができたことで、この研究における最大の難関を克服することができたと考えている。 英国・フランスで16世紀印刷本、とりわけフランス本の研究者と話し合うことができたことで、データベース調査の問題点が理解できた。また、新たに構築されたデータベースLYON 15-16で詳細検索を行う許可を得たことで、リヨン印刷本の調査をスムーズに行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の調査範囲は16世紀前半から中葉にかけてのフランス印刷本であったため、16世紀後半の調査がさらに必要である。また、16世紀後半のドイツ、低地諸地方、英国のページ付け発展の過程を解明するため、継続して書誌データベースを調査して、該当する書誌データを蓄積する必要がある。そのため、2020年度にはドイツとベルギーにおける現物調査を予定している。ミュンヘンのバイエルン州立図書館、ケルン大学図書館、ベルギー国立図書館、アントウェルペンのプランタン=モレトゥス博物館等で調査を行う。ただし、新型コロナウィルス感染でヨーロッパへ渡航可能となる時期が不明なため、当面はVD16、USTCの書誌データベースと画像データを利用して調査を進めていく。
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