2018 Fiscal Year Research-status Report
An Introduction to the Archives Project Managed by Edvard Grönblad in the 19th Century Finland
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17K00464
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
平井 孝典 藤女子大学, 文学部, 講師 (20396336)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フィンランド / グロンブロード / アーカイブズ / 羊皮紙 / セナーッティ / プロトコール / 情報アクセス |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の成果】本研究では資料保存の重要性、このことが認識された契機を確認している。ヘルシンキ大学図書館アーキビスト、エドバルド・グロンブロードによる中世カトリック教会関係資料などに関わる実務に焦点をあてている。2017年度に、オーボアカデミ図書館のアーカイブズ資料に含まれていた、アーキビスト・グロンブロードによる資料集刊行許可手続き資料などを撮影入手した。2018年度は、ヘルシンキの国立公文書館で数日を費やし、刊行許可に関わるプロトコールを写した。19世紀フィンランドの情報アクセス環境を整える作業の一つ、資料活字化と印刷、それに対する手続きを調査研究した。この年度は、プロトコールの分析に時間を要した。これまでの研究成果も踏まえつつ分析をしている。これまでの入手済みの作業ノート及び作業報告の手紙も用いている。 【具体的内容、意義、重要性等】本研究の対象は、フィンランド中世カトリック教会資料に関わる実務である。グロンブロードはこの整理作業と並行し、中世資料の活字化刊行を続けた。これまでの研究代表者による研究成果では、情報アクセス権については触れてきた。しかしながら作業そのものの法的課題については十分に説明を行ってきたとは言えない部分がある。2018年度の研究は、政府セナーッティで、資料集刊行にあたり、どのような審議が閣僚クラスで行われたか、検討している。閣議でも、資料集刊行及びそれへの費用捻出は当然のこととしつつ、具体的な内容について会議が行われたことを確認している。成果は、2019年7月に報告するのを手始めに順次、公表される。19世紀フィンランドの公文書管理及び情報アクセスについて、情報アクセス環境を整える実務に対する政府コンセンサスが明らかにされることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グロンブロード関係資料が所蔵されるアーカイブズ・図書館で、①閲覧(撮影)、②調査(内容確認)と研究を進めている。2018年度は資料の状況から書き写すことにも時間を費やした。フィンランドでは、手紙など個人資料の多くは電子目録化がされていない。数冊のノート(国立公文書館も国立図書館アーカイブズもノートは階層ごとに作られている)で構成される紙目録で調べ、出納を要求することになる。場合によっては時間をかけ分析し改めて資料を再閲覧することもある。目録自体にも詳細な記述はなく、請求と出納を繰り返して確認し、資料を撮影閲覧する、あるいは書き写すことになる。目録データはデータ作成年の新しいものはフィンランド語である。スウェーデン語の予想される資料名をフィンランド語に訳し検索する。2018年度は、①作業ノート及び作業報告の手紙でグロンブロードの業務を確認し、②フィンランド国立公文書館とスウェーデン語文献協会で公式な文書の調査確認を試みた。フィンランド国立公文書館で資料集刊行に関わるプロトコールを閲覧書写し、分析できたことは大きな進展である。セナーッティ資料の整理状況は20世紀の独立後の公文書に比べてよい、とはいえない。訪問しての研究継続の結果、当時の役所の分掌を把握しつつ資料整理実務の階層構造を理解しつつある。経験を生かし研究を進めていく所存である。なお、2018年度は予定外にヘルシンキ大学の専任研究者と19世紀研究の取り組みに関連して意見交換をする機会があり、グロンブロードの評価について、率直な感想を聞くことができた。今後の研究に反映していくつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
フィンランドの記録管理やアーカイブズの大きく展開したのが19世紀である。資料保存の重要性、この認識も、例えば学術関係者であっても、火災や紛失、国際関係情勢など様々な契機や事件で深まることになった。当面は、政府メンバーがどのように情報アクセス環境を整える業務を認識していたのか、検討したい。グロンブロードらの業務はどのように考えられていたのか、考えていきたい。政府作成取得の公文書などで引き続き確認する所存である。今年度は、①作業ノート及び関連の同僚への手紙などを継続して分析、②アルヴィドソンら関係者への刊行手続き過程での手紙等で作業の意図背景を確認、する予定である。関係のアーカイブズも引き続き訪問する。学会などで成果を報告する予定である。これまでの成果の一部は、2019年度のバルト=スカンディナヴィア研究会7月例会で「19世紀フィンランドにおける資料集刊行とそのセナーッティでの審議― 1859年1月22日プロトコールの紹介 ―」と題し報告することが既に決定している。
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