2020 Fiscal Year Research-status Report
An Introduction to the Archives Project Managed by Edvard Grönblad in the 19th Century Finland
Project/Area Number |
17K00464
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
平井 孝典 藤女子大学, 文学部, 准教授 (20396336)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グルーンブラード / グロンブロード / アルキヴァーリエ / アーキビスト / フィンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の成果】当該年度は基礎的な作業に終始した。①情報アクセス権を根拠に作成された行政文書の当時の印刷物は、実物を購入することも、しやすくなっている。状態のよいものの購入を古書店などで探す作業を続けている。おそらく、当時の情報公開の実務作業の成果の一端を直接に見ることができそうである。印刷のコスト感覚、質もわかる。②Historian Ystaevaein Liittoのオンラインでの研究会の例会・年次大会に計3回(配信開始日は各、2020/11/27、2020/12/09、2021/02/06)参加した。研究発表の多くのテーマは20世紀対象であったが、歴史的資料の活用状況の例について学ぶことができた。広い意味で、19世紀フィンランドのアーカイブズ実務成果に関連している。これらとは別に、2020年12月14日には「原子力施設廃止をアーカイブする;課題と協働」というテーマの英国、スウェーデンなどの原子力施設関係者による臨時の研究に参加した。原子力施設の文書などの長期保存は重い課題である(半減期の考慮などが必要)。資料の長期保存に関わる究極の諸論点を考える機会を得た。③2019年7月のバルト=スカンディナヴィア研究会で、本研究に関わり、歴史的事項の理解の変遷や用語法の変遷にも目を向けるよう示唆をいただいた。例えば、グルーンブラードは棍棒戦争の資料集を刊行している。本研究では間接的なことになるかもしれないが、今現在の棍棒戦争研究の成果も詳細に把握することを始めた。 【具体的内容、意義、重要性等】 ①情報公開のかつての手段である印刷刊行の具体的な状況。②そもそも利用者の視点で資料の保存はどのように考えるべきか。③歴史学研究との関係。これらの課題を考えるための基礎作業を進めることはできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では資料保存の重要性、このことが認識された契機を確認している。この契機の一つである19世紀の実務を考察してる。2020年度は、現地調査の困難な状況などにより、研究の進め方を少し修正した。夏期休業中などのアーカイブズ訪問調査を諦め、①本研究に関連する図書、特に19世紀の印刷物の確認と購入などに時間を用いた。②ビデオ会議併用の海外の学会へ積極的に参加し、研究の状況を把握した。③グルーンブラードの資料集刊行に関わる歴史的事項について確認した。結果として、当初の予定であった、断簡コレクションなどグルーンブラードの対象資料に関する手紙など関係資料の収集やその分析は行えなかった。いわば、マクロ的な視点で本研究を再確認する機会とはなった。グルーンブラードの送信した手紙などは、当然、フィンランドなどで分散して残されている。収集作業には現地訪問が必要であり、場合によっては、詳しい研究者などに聞くこともある。遅れてはいるが、マクロ的な把握をさらに進め、グルーンブラード研究のできる機会に、効率よく進められるよう準備する。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、19世紀の資料のあり方を大きく把握しようとしている。①19世紀のアーキビストの成果印刷物の積極的な収集閲覧。②歴史学研究などでの19世紀資料の利用状況の考察。③断簡コレクションなどグルーンブラー ドの対象資料の社会での重要性、捉え方の変遷を把握。当面はこうした作業を続ける。その上で、本研究の最終年度で、一定のまとめをしておきたい。記録管理業務の本質的な意味を一定程度考え成果としてまとめたい。例えば、グルーンブラードによる情報アクセス環境を整える業務、すなわち歴史資料の印刷公刊には、棍棒戦争関係資料も含まれる。この資料集には、グルーンブラー ドによる資料集には珍しく、長い解説もある。公刊の経緯の一部は「(史料紹介)19世紀フィンランドにおける史料集刊行とセナーッティでの審議の例― 1859年1月22日プロトコールの紹介 ― 」でも触れた。ロシア統治下で、一揆関係の資料が公刊された意味は何か。あるいは、グルーンブラードはこの資料集をどのように自身の業績として考えていたのか。また、「フィンランド中世カトリック教会断簡コレクションのデジタル公開 」でも述べたように、グルーンブラードは、行政文書の表紙を中世カトリック教会文書の流用であることを明確に指摘し、行政文書の目録化のみならず、表紙の保存にもフィンランドで留意した初めての人物である。結果、表紙の断簡は今日、デジタル公開され日本でも閲覧できる。本研究での研究作業の蓄積を踏まえ改めて、フィンランドのアルキーフ業務の意味を考えたい。
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