2017 Fiscal Year Research-status Report
ウランの低レベル放射能測定を可能にする新規蛍光X線分析システムの開発
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17K00563
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
吉井 裕 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 計測・線量評価部, 主幹研究員(定常) (20334047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊豆本 幸恵 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 計測・線量評価部, 研究員(任非) (20731798)
酒井 康弘 東邦大学, 理学部, 教授 (90235127)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 蛍光X線分析装置 / X線フィルター / コロジオン薄膜試料台 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は装置製作と一次X線フィルター構成の探索を予定していた。装置製作に関しては、試料固定冶具を完成させた。これは、当初計画していた試料台の回転に加え、全反射蛍光X線分析を行う際に必要となるX軸方向(試料台-検出器方向)の微調整および試料高さの微修正を行うことのできる機構を追加したものである。一方、その設計と製作に時間がかかり、X線管固定冶具および検出器固定冶具の製作は平成30年度に持ち越した。このため、平成29年度中に装置を完成させるという計画は達成できなかった。一次X線フィルター構成の探索では、既存装置を用い、ウランの分析に最適なフィルター構成を探索した。金属箔が薄すぎると制動X線の散乱線に由来するバックグラウンド信号が高くS/N比に劣る一方、金属箔が厚すぎると励起に必要なX線までも削減してしまい、信号が下がるのでやはりS/N比が悪化する。このため、バックグラウンド信号強度のばらつきの3倍の信号を与えるウラン濃度として定義される検出下限値(minimum detection limit: MDL)を指標としてNi箔およびCu箔の厚さを変えながらウラン試料の分析を行い、金属箔厚さとMDLの相関を調査したところ、80μmのNiが最適だった。Mo薄膜を用いた検討ではS/N比はほとんど変化しなかったが、試料溶液にMo標準液を少量混合させた試料ではS/Nが改善した。 平成30年度以降に予定していた試料台の検討について、コロジオン薄膜試料台の膜厚測定、コロジオン薄膜試料台に滴下した試料溶液の接触角測定を行った。また、簡易エバポレーターによって試料を10倍濃縮するための手法を確立した。 このように、平成29年度に予定していた装置の製作は完了しなかったが、平成30年度以降に計画していた研究を一部前倒しして実行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に予定していた装置の完成は実現しなかったが、平成30年度以降に予定していたコロジオン薄膜試料台に関する検討及び簡易エバポレーターによる試料濃縮法の検討を先行して行った。このため、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成30年度前半にX線管固定冶具と検出器固定冶具を製作し、装置を完成させる。ここで、X線管固定冶具には、蛍光X線分析用のコリメータが設置でき、これを全反射蛍光X線分析では導波路に交換できるようにする。また、検出器は試料台が回転する際に干渉しないよう、試料-検出器の軸に対してスライドできるように設計する。続いて、これまでに既存装置を用いて最適化した一次X線フィルター構成と製作している装置において最適な一次X線フィルター構成は類似していると考えられるため、これまでに既存装置で最適化したフィルター構成の近傍の数種類のフィルター構成でウラン試料の分析を行い、新規装置に対してフィルター構成を最適化する。これまでの検討で、NiあるいはCuを用いた一次X線フィルターによるバックグラウンドの低減により、十分な感度が得られると予想される。平成30年度中に模擬試料作成方法の検討を行い、その実際の測定は平成31年度に行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
平成29年度に試料固定冶具、X線管固定冶具、検出器固定冶具を製作する予定だったが、試料固定冶具の制作に時間がかかってしまい、X線管固定冶具と検出器固定冶具の製作を平成30年度に実施することとした。一方、平成30年度に計画していた研究の一部を前倒しして行ったため、次年度使用額は余剰となったX線管固定冶具と検出器固定冶具の製作費から前倒しして行った研究に要した経費の差となっている。平成30年度にはX線管固定冶具と検出器固定冶具を製作し、さらに平成30年度に計画していた模擬試料作成方法の検討を行う。
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Research Products
(1 results)