2018 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代の手織縞の色彩構成原理の探求およびその継承のあり方について
| Project/Area Number |
17K00742
|
|---|
| Research Institution | Kobe Design University |
|---|
Principal Investigator |
曽和 英子 神戸芸術工科大学, 附置研究所, 研究員 (80537134)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ばんば まさえ 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (00249202)
曽和 具之 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (00341016)
さくま はな 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (00589202)
黄 國賓 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (50441382)
渡邉 操 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 助教 (00567844)
安森 弘昌 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (20341018)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
| Keywords | 地域資源活用 / 丹波布 / 河内木綿 / 糸染め / 縞割 / 絹糸績み / 絹糸紡ぎ / 手織り機 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、日本の縞の色彩美に着目し、日本における縞織物の色彩の展開、縞織技術の開発について考察した。特に、柳宗悦らにより復興され、持続的に技術者を養成し続けている丹波布に焦点を当てた調査を通して、丹波布の色彩美と制作技法の調査、丹波布や河内木綿の縞構成のデジタル化、縞模様のイメージ分析を行ない、「丹波布の美学及びその技術伝承」（社会芸術学会誌）の論文を発表した。
初年度の研究の中で日本の縞の美が素材活用と深く関連していることを明らかにすることができたので、2018年度は「縞の色彩美」について、その視覚的要素だけではなく、素材や触感などの要素を組み込んだ多角的視点で捉えた調査を展開した。
地域資源活用についての研究成果は「丹波布技術伝承における地域資源活用の取り組み（単著）」、「地域の歴史・文化・資源を活かした高大接続型デザイン教育（共著）」の２本の論文にまとめ、アジアデザイン文化学会にてアジア諸国から参加した学者たちと有意義な議論を展開することができた。
高校の総合学習や大学の学科横断プロジェクトで、木綿素材を活用した体験プログラムを実施させてもらい、そのような実践的な試みを『地域資源学―綿から織物まで』（計48ページ）の冊子にまとめ、中高生などに向けた総合学習のテキストとして活用している。
日本の縞の色彩美を現代に受け継ぐためのシステムについての研究をまとめ、国際学会Cumulus Conferenceで「The Respective Roles of the Government, Citizens and Academics in the Sustainable Development of Tamba Nuno」を発表し、縞織の色彩美の持続的発展に向けた提言を行なった。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本の縞木綿の色彩・素材・製作技法、着用者の社会・文化的背景との関連を探ることにより、日本の色彩構成の原理を探り、デザイン教育と産業界における日本の色彩美の持続的継承のあり方を考察することを目的とし、これまでに以下の事項についての調査研究を進めてきた。
１）日本の縞木綿の色彩構成原理：丹波布、河内木綿、津軽木綿の縞模様の色彩実測調査、縞割分析を行ない、縞木綿織の技術者たちに糸紡ぎや染色素材の確保についてのアンケート調査とインタビューを行ない、縞づくりにおける地域資源活用の知恵を明らかにした。
２）中国の南京布との比較：江戸時代に南京布として日本に多く輸入されたとされる中国江南地域の木綿について現地調査を行ない、南通、崇明、余姚地域に伝承されている古い布の資料収集および染めと織りの技術について調べ、日本の縞木綿との色彩や質感の違いを明らかにした。
３）現代の地域教育への活用のためのテキスト制作：本学が兵庫県立鈴蘭台高校で行われている高大連携のプロジェクトを利用して、和綿栽培・糸紡ぎ・草木染め・手織りの一連の技術体験による地域資源活用教育プログラムを実践した。また、本学の学科横断プロジェクトにおいても和綿と藍を栽培し、糸紡ぎを体験するプログラムの導入を支援し、これらの研究・実践成果を踏まえた『地域資源学―棉から織物まで』の冊子をまとめた。
４）ワークショップ用の染織用具の開発および実験：かつての手織り産業で活用されていた様々な染織道具を体験した上で、中国苗族の紐織り用の簡易織機および筬など、現代のデザイン教育や地域資源活用教育のためのワークショップ用の道具を開発した。
総じて、研究の目的に基づいた調査を一歩ずつ進めており、概ね順調に進展していると言える。
|
| Strategy for Future Research Activity |
本研究は、これまでに江戸時代の縞木綿の古法についての調査を通して、それらの色彩美が手紡ぎ木綿素材や地域の草木を利用した染めにより現れたことを検証し、その素材美および地域資源活用の知恵について調べた。また、中国の木綿制作技法や素材美との比較を通して、縞の色彩美が地域資源活用の結果であることを突き止めることができた。
2019年度はこのような縞の色彩美が生み出された江戸時代の縞織について、その初期段階に避ける織りと染めの技術的発展、その熟成期における社会的・文化的役割を探っていく。具体的な実施内容について以下のように考える。
１）日本の縞木綿生産初期の技術：丹波布や河内木綿技術以前に、日本ではインド等地の桟留織りを模倣する段階を経ている。東京国立博物館の唐桟留羽織（19世紀）及び千葉館山唐桟の織元を訪ね、模倣段階での桟留の染織技術及び配色の特徴を把握し、丹波布や河内木綿と比較することにより、木綿織の成熟に伴い生まれた日本独自の色彩美を導き出す。２）庶民文化における縞の意味性：江戸時代の浮世絵に見られる縞の表現を収集し、着用者の身分や社会背景などについて概観することにより、縞が庶民の文化としてどのような役割を担ってきたのかについて考察する。３）縞織を用いた教育プログラムの提案：2018年度に続き綿から織りまでのワークショッププログラムの実施を通して、縞織により生み出される色彩美を日本の文化として次世代に伝えていけるよう、テキストを修正・完成していく。４）研究成果の発信：研究内容をまとめた成果展示会を開き、研究メンバーや調査協力者らと研究セミナーを開催することにより、日本の美意識の持続的発展に向けた異分野間の議論を展開し、本研究の見解をまとめる。
|
| Causes of Carryover |
当該年度にはおよそ交付決定額の予定通りの支出となり、既受領額と支出額の差引額は１万円未満であった。
|
Research Products
(3 results)
