2019 Fiscal Year Research-status Report
何が小腸上皮の時期的分化をスイッチするのか?~オルガノイドを用いた解析~
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17K00903
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
馬場 良子 産業医科大学, 医学部, 講師 (90271436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國分 啓司 産業医科大学, 医学部, 助教 (00432740)
森本 景之 産業医科大学, 医学部, 教授 (30335806)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小腸 / パネート細胞 / 杯細胞 / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、小腸吸収上皮細胞には時期的、部位的多様性があり、乳飲期の小腸吸収上皮細胞が食物アレルギーに関わる可能性を示してきた。また、乳飲期の栄養をコントロールすることで、吸収上皮細胞の構造と機能に変化が生じる時期をある程度はシフトできることを報告している。時期特有の消化器疾患等が知られているにもかかわらず、時間軸に着目した吸収上皮細胞の分化に関する報告はほとんど見られない。そこで本研究では、3次元培養(細胞組織体培養)法を用いて単離した陰窩よりオルガノイドを作製することで、上皮以外の要素を排除し、上皮細胞に時期的変化をもたらす機構を解明する。 昨年度、マウス小腸において陰窩形成が生じる時期に一致して、パネート細胞にH3K27のトリメチル化が生じることが分かったため、この時期の小腸陰窩よりオルガノイドを作製し、EZH2 inhibitorである3-deazaneplanocin A(DZNep)またはGSK126を用いて、H3K27のトリメチル化を阻害した。その結果、陰窩の形成に差が見られたことから、時期や部位によって、トリメチル化の阻害が陰窩の形成に及ぼす影響が異なることが明らかになった。また、電子顕微鏡によって超微形態学的に観察した結果、典型的なパネート細胞の出現の前に、パネート細胞と杯細胞の中間型のような形態的特徴を示す細胞が出現することが分かった。炎症性腸疾患等で、パネート細胞と杯細胞の中間型のような細胞が出現することが報告されており、疾患発症機序の解明にも役立つ可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とは異なる点もあるものの、時期および部位によるメチル化阻害による影響の違い、パネート細胞と杯細胞の中間型細胞の存在などの知見を得ることができた。時期的、部位的差異の検討により、小腸上皮の分化をスイッチする機構が明らかになる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
オルガノイドにおける陰窩形成とメチル化阻害剤の関係について、さらに検討を進める。また、発達段階で出現した中間型細胞の由来について、解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、年度末に参加を予定していた学会が開催されず、その出張のための旅費が残ったため。次年度、学会参加し、研究成果の発表を行う予定である。
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