2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代の肥満予防を目指した発育初期のポリフェノール摂取効果の検証と分子機構の解明
Project/Area Number |
17K00922
|
Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
佐藤 伸 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (40310099)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 友花 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (60331211)
乗鞍 敏夫 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (40468111)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 胎生期低栄養 / 肥満 / 炎症細胞 / 炎症性サイトカイン / DNAメチル基転移酵素 / 茶カテキン |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生期や乳児期の低栄養によって、成長後の子の肥満の発症リスクが増大することがわかってきた。植物由来のある種のポリフェノールは、成人や成獣を用いた動物実験で肥満を改善することが知られている。また、肥満の発症には、エピジェネティクスな制御が関与しているという。しかし、ポリフェノールの摂取によって、胎生期や乳児期の低栄養に起因する肥満を改善するのか、また、低栄養に曝された子に生じる肥満においてポリフェノールがエピジェネティックな制御に関与するのかについてはよくわかっていない。 これまで、胎生期および乳児期に低蛋白食に曝された母ラットが授乳期に摂取する緑茶抽出物(GTE)は、離乳後、高脂肪食を負荷し続けた雄性仔ラットの腎臓中の炎症細胞の浸潤、線維化面積や炎症性サイトカインの1つであるTumor necrosis factor-αのmRNA量を軽減することを明らかにした。しかし、授乳期に摂取したGTEがエピジェネティックな制御に関与する因子に影響を及ぼすかについてはわかっていなかった。そこで、今年度は、授乳期に摂取したGTEのDNAメチル基転移酵素(DNMTs)、ヘミメチル化DNA結合タンパク質(Uhrf1)、ヒストンメチル基転移酵素であるG9aのmRNA発現量に及ぼす影響を調べた。その結果、授乳期にGTEを摂取した群では摂取しない群に比べて、DNAのメチル化の維持に関わるDNMT1 のmRNA量は減少した。一方、DNMT3aでは有意な減少は見られなかった。また、UHRF1やG9aの発現量は減少した。これらの結果は、授乳期に摂取するGTEは、エピジェネティックな制御を介して、高脂肪食の摂取により生じる腎臓の炎症や線維化を軽減する可能性を示唆していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、胎生期および乳児期に低蛋白食に曝された母ラットが授乳期に摂取する緑茶抽出物(GTE)は、離乳後、高脂肪食を負荷し続けた雄性仔ラットの腎臓においてエピジェネティックな制御に関与するDNAメチル基転移酵素(DNMT)、UHRF1 、G9aのmRNA発現量をリアルタイムPCR報告により解析した。これにより、授乳期にGTEを摂取した母ラットから産まれた雄性仔ラットの腎臓で認められたマクロファージの浸潤、線維化、炎症性サイトカインの低減は、エピジェネティックな制御が関連することを示した。これまでの成果をまとめて国際学術雑誌に公表することができた。以上のことから、初年度の成果は目標を概ね達成していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
一般に、ある種の植物性ポリフェノールは、肥満や耐糖能異常を改善することが知られているが、胎生期および乳児期の低栄養に起因する脂質や糖代謝の異常に及ぼすポリフェノールの影響に関する知見は少ない。胎生期の栄養環境が、何らかの形で「記憶」されるというエピジェネティックな働きが関与し、成長後の肥満の発症に大きく関わっているという。しかし、ポリフェノールは、胎生期の栄養環境に起因する肥満を予防するのか、さらに、肥満にともなう慢性炎症をどのように制御するのかよくわかっていない。 果糖の過剰摂取は、成人や成獣実験動物において糖尿病、高血圧および肥満の発症リスクが高まることが知られている。そこで、今年度は、前年度の得られた研究成果をベースにして、妊娠期に低栄養に曝された母ラットの授乳期にポリフェノールを与え、離乳後、過剰の果糖を摂取させ、糖尿病や肥満におけるポリフェノールの生理的役割を明らかにするために、授乳期に摂取するポリフェノールは、慢性炎症に関わる因子(マクロファージの浸潤や炎症性サイトカインの増加)や炎症性サイトカインに応答する転写因子の活性を制御するかなどを検討する。
|