2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代の肥満予防を目指した発育初期のポリフェノール摂取効果の検証と分子機構の解明
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17K00922
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
佐藤 伸 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (40310099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 友花 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (60331211)
乗鞍 敏夫 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (40468111)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胎生期低栄養 / 肥満 / 炎症細胞 / 炎症性サイトカイン / オートファジー / 脂質代謝 / ケルセチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ある種の植物由来のポリフェノールは、抗酸化作用や抗炎症作用を有し、さらに肥満や糖・脂質代謝異常を改善することが知られている。しかし、胎生期および乳児期の低栄養に起因する糖・脂質代謝異常に及ぼすポリフェノールの影響に関する知見は少ない。授乳期に摂取するポリフェノールの生理的役割を明らかにするために、以下の実験を行ってきた。 妊娠期並びに授乳期に低栄養に曝された母ラットの授乳期にポリフェノールの一種であるケルセチンを雌雄仔ラットに与え、離乳後、実験1として雌性仔ラットに10%果糖液を11週間負荷し、実験2として雄性仔ラットに高脂肪食を44週齢まで負荷した。 その結果、実験1では、過剰の果糖摂取した雌性仔ラットの腎臓間質では炎症細胞(マクロファージ)の浸潤数の増加、炎症性サイトカインであるTNF-αのmRNA発現量の増加がみられた。また、オートファジーの指標のひとつとなるLC3B-Ⅱの発現量が減少した。これらに対して、授乳期にケルセチンを摂取し離乳後に過剰の果糖摂取した雌性仔ラットでは、腎臓間質のマクロファージ数やTNF-αのmRNA発現量は減少した。またLC3B-Ⅱの発現量は増加した。このことから、授乳期に摂取したケルセチンは、離乳後の過剰の果糖により生じた慢性炎症やオートファジーの障害を軽減することが示唆された。実験2では、離乳後に高脂肪食を負荷した雄性仔ラットについては、試料の採取は終わっているので、今年度は高脂肪食摂取により生じる慢性炎症や糖・脂質代謝の異常を軽減するかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、胎生期・脂質代謝乳児期に低蛋白食に曝された母ラットが授乳期に摂取するケルセチンは、離乳後、過剰の果糖を負荷し続けた雌性仔ラットの腎臓における影響について検討した。その結果、授乳期にケルセチンを摂取し、離乳後に過剰の果糖を11週間摂取した雌性仔ラットでは、腎臓における①マクロファージの浸潤やTNF-αのmRNA量の減少、②オートファジーにかかわるLC3B-Ⅱの発現量の増加やp62発現量の減少などを見出し、授乳期に摂取したケルセチンは離乳後、過剰の果糖を摂取した雌性仔ラットの腎臓における慢性炎症を抑制し、オートファジーを促進する可能性が示唆された。このような結果をまとめて、現在、投稿準備を進めている。以上のことから、初年度の成果は目標を概ね達成していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、離乳後に高脂肪食を負荷した雄性仔ラットから得た試料を用いて、授乳期に摂取したケルセチンの生理調節機構を明らかにするために、雄性仔ラットが摂取する高脂肪食によって生じる腎臓をはじめ、他の臓器中の慢性炎症かかわるマクロファージの浸潤の程度、炎症性サイトカインの発現量やオートファジーにかかわる因子の発現量などに及ぼすケルセチンの影響を検討し、もし、影響を及ぼすならば、エピジェネティックな働きに関与する酵素(DNAメチル基転移酵素やヒストン脱アセチル化酵素)などの発現や活性を調べる。以上から、結果を取りまとめて、成果の発表を行う。
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