2018 Fiscal Year Research-status Report
大豆発酵食品による酸化ストレスレベルおよび炎症レベルの低減効果の解明
Project/Area Number |
17K00937
|
Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
及川 佐枝子 (多田佐枝子) 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (90610585)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江崎 秀男 椙山女学園大学, 生活科学部, 教授 (90097642)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 豆味噌 / 大豆発酵食品 / 抗酸化作用 / 抗炎症作用 / 血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
味噌は、我が国で古くから調味料として利用されているが、近年その抗酸化作用が注目されている。そのなかでも特に豆味噌は、強い抗酸化作用を示す事が報告されている。しかし生体に対する作用の詳細は明らかでないため、本研究ではヒトマクロファージ様細胞を用い、各種味噌(豆味噌、米味噌、麦味噌など)の抽出物による抗酸化・抗炎症作用の細胞レベルでの検討、さらに若年女性を対象に味噌摂取による血中および尿中の酸化ストレスレベル・炎症レベルの低減効果の検討を行う。本年度は昨年度に引き続き、酸化ストレスを負荷したTHP-1ヒトマクロファージ様細胞に豆味噌抽出物を投与し、細胞死および細胞内活性酸素種(ROS)の生成の抑制を解析した。その結果、豆味噌抽出物の量に依存して細胞死およびROSの生成が抑制され、豆味噌成分の抗酸化作用による細胞死の抑制効果が示唆された。 また、若年健常女性を対象に昼食時に味噌を味噌汁として2週間摂取してもらい、摂取前後の血中および尿中酸化ストレスレベルを測定した。その結果、豆味噌摂取により血中酸化ストレスレベルが低下する傾向が認められたが、米味噌摂取では変化は認められなかった。さらに、尿中酸化ストレスレベルをマロンジアルデヒド(MDA)を指標として解析した結果、豆味噌摂取群、米味噌摂取群、非摂取群ともに減少傾向となった。この結果についてはサンプル数が少なかったことから、今後サンプル数を増やし再度検討していく予定である。 さらに今回は、毎日1杯の味噌汁の摂取が血圧に影響するかについて、上記の味噌摂取前後に同時に自動血圧計にて血圧の測定を行った。その結果、豆味噌および米味噌摂取群、非摂取群ともに変化は認められなかった。味噌摂取による血圧への影響については、今後もさらに検討していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、培養細胞を用いた検討については、昨年度と味噌のロットが変わり、その影響は不明ではあるが、低減作用は認められたものの程度は昨年度より低かった。このことから追試を何度も行ったため、この試験はあまり進まなかった。しかし、新たに細胞内活性酸素種の蛍光プローブを用い、細胞の酸化ストレスレベルを直接的に解析した。その結果、味噌抽出物により細胞内活性酸素種の低下が認められ、これまでの細胞死を指標とした結果を裏付けるものとなった。 また、若年女性を対象に行った試験において、本年度は豆味噌摂取により血中酸化ストレス度が低下する傾向が認められた。一方、米味噌摂取においては、変化は認められなかった。さらに本年度は、尿中酸化ストレスレベルの解析も行った。尿サンプルを用いて、酸化ストレスマーカーの8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)を指標として検討する予定であったが、機械が調整中であったことから脂質過酸化の指標であるmalondialdehyde(MDA)の測定を行った。その結果、豆味噌摂取、米味噌摂取のいずれにおいても尿中MDA量は減少する傾向がみられ、さらに非摂取群においても減少がみられた。今回はサンプル数が6と少なく、信頼度の高い結果が得られなかったと考えられ、今後、サンプル数を増やし再度検討する予定である。 さらに、本年度は味噌摂取による血圧への影響も調べた。その結果、今回の対象者においては味噌摂取による血圧への影響はみられなかった。 以上のように細胞を用いた検討はあまり進まなかったが、若年女性を対象に行った試験ではおおむね予想された結果が得られたことから、今回の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
豆味噌によるマクロファージ様細胞に対する抗酸化作用については、おおむね見通しはついた。今後、米味噌や麦味噌との比較検討を行う。また、抗炎症作用についてはまだ検討している段階であるため、今後、IL-1βやTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカイン産生の測定、また炎症反応の過程で産生される一酸化窒素(NO)の測定を行い、味噌抽出物の投与による抗炎症作用の検討を行う予定である。さらに、NOに対する蛍光プローブを用い、細胞内NOを解析し抗炎症作用の結果を確実なものとする。 また、若年健常女性を対象にした試験においては、今回、豆味噌摂取により血中酸化ストレスレベルの低下傾向は認められたため、今後は尿中酸化ストレスレベルを指標に検討を行う。尿中酸化ストレスマーカーとして、マロンジアルデヒドの測定と8-OHdGの測定を行う予定であるが、HPLC-ECDによる8-OHdGの測定は機械の調子に左右されることから、HPLC-ECDで測定できない場合はキットを用いる。さらに、酸化ストレスレベルの低減効果だけでなく、炎症レベルの低減効果についても、尿中の炎症マーカーを解析することで検討を行う予定である。 さらに、抗酸化あるいは抗炎症作用を引き起こす味噌中の成分を検討するため、味噌抽出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより分画し、抗酸化・抗炎症成分の同定を行う予定である。
|
-
-
[Journal Article] NF-κB inhibitor DHMEQ inhibits titanium dioxide nanoparticle-induced interleukin-1β production: Inhibition of the PM2.5-induced inflammation model.2018
Author(s)
Fukatsu H, Koide N, Tada-Oikawa S, Izuoka K, Ikegami A, Ichihara S, Ukaji T, Morita N, Naiki Y, Komatsu T, Umezawa K.
-
Journal Title
Mol Med Rep
Volume: 18
Pages: 5279-5285
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-