2017 Fiscal Year Research-status Report
科学的に認識できる風水害用の防災教育プログラムの開発
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17K01033
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
此松 昌彦 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50314547)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 風水害 / 土砂災害 / 防災教育 / 小学校 / 中学校 / 和歌山県 |
Outline of Annual Research Achievements |
和歌山県内の学校では、地震からの備えについては南海トラフ地震の対応のために沿岸部の学校を主に防災教育などに取り組んできている。しかし風水害からの備えについては教材も少ないことから進んでいない。しかし最近はゲリラ豪雨などが増加して、和歌山県のように山間地域の多い場所では土砂災害も発生する危険性は高まっている。このような背景のもとで、土砂災害用の啓発用の防災教育プログラムを開発する意義は高い。 そこで初年度の平成29年度では、現状把握するための研究調査を主として実施した。小中学校の理科教科書を使用して、洪水や土砂災害についての記述について調べた。その結果、土砂災害について詳細は小学校5年生の理科において「流水の働き」において掲載され、中学校1年などで行われている。さらに平成29年に告示された小中学校の新指導要領理科についても調べた。その結果、小学校4年生に「雨水の行方と地面の様子」が新しく項目として入った。その後、5年生では従来通りの「流れる流水の働きと土地の変化」になっている。全般的に最近の風水害の多さを反映してか、風水害について理解できるように工夫され追加されているように推定できる。とくに4年生に新項目に「地面の傾きと水の流れ」が入ることによって洪水だけでなく内水氾濫についても考えることができる。またその中での新項目「水のしみ込み方」においても土砂の中での水がどのようにしみ込むことができるか、土砂災害のための教材を開発するのに大事な項目になる。 児童・生徒たちが風水害についてあまりイメージがないので、学校や自治体などで配布している土砂災害用の啓発パンフを収集した。地震に比べ種類が少なくことがわかる。また本格的な学校へのアンケート調査はまだできていないが、一部の学校関係にヒアリングすると風水害向けの防災訓練を実施している学校はなく、アンケート調査のための項目を作成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
和歌山県では土砂災害や洪水が毎年発生している。土砂災害に関心を持っている学校は多いようだ。しかし学校現場において土砂災害について教えることは少ない。学校現場の教員と話しても和歌山県においては地震の防災教育をメインとして進めていることもあり、土砂災害などの風水害に関心をもつ学校が少ない。そのため協力してもらえる学校がまだ見つかっていない。和歌山県教育委員会の協力をいただきながら教材を使っていただけるような学校について検討している。 昨年度はエフォート的に申請時に20%としていたところ、学内の管理部門の仕事が急遽増加したり、同僚の教員が病休になり、その負担を補うために代わりの学生指導など教育関係のエフォートが増加して、10~15%程度しかとることができなかった。そのため進捗状況がやや遅れているとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は昨年度に実施できなかった調査を9月頃までに実施し、学校へのアンケート調査を行い、洪水や土砂災害などの風水害教育の課題について抽出していく。昨年度同様に今年度も河川の氾濫、土砂災害の映像や写真を収集する。紀伊半島大水害での被災時の証言ヒアリングを実施し、避難について地図に書き入れて、どのように避難したのかを電子地図にルートとして記録する。また協力学校を作り、風水害のハザードマップについて児童・生徒に観察してもらいどこまでイメージできるのかを検証する。 平成30年度後半には申請書の第2フェーズとして科学的な認識ができる実験や観察教材を制作する。特に土砂災害用の実験用教材を開発する。そもそも土砂災害は、どのようなメカニズムで発生するのか児童・生徒には理解されていない。 もちろん雨が降ることにより土砂が崩れるのは理解できているようだが、雨水は地面に浸み込むため その後の崩壊のプロセスを実際に観察することができない弱点を持っている。そこで既存の泥や砂を 使った土砂災害の再現をする実験を簡易に改良して、外部の専門家を呼ばなくても、教員が学校でも 簡便にできるような実験教材を開発する。土石流、地すべり、崖崩れの3種類について作成する。 風水害の発生しやすい地形を理解する教材を開発する。平成30年度には防災訓練プログラムを作成する。その中で学校の通学路の安全マップを作成する。さらに次年度は開発したプログラムを改良して科学的に認識を伴う防災訓練プログラムとして完成させて、冊子等を作成し公開していく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究のエフォートを20%としていたところ、同僚教員の病休により卒論学生の代わりの指導、授業負担によりエフォートが10~15%になってしまい、予定通りの研究を進めることができなかった。また協力学校がなかなか見つからないことも遅れる原因となった。 そこで次年度では、9月頃までの前期に当該年度に実施できなかった協力学校でのヒアリングや県内の学校での風水害への防災教育アンケートなどを実施する。10月以降は本来の予定通り進めて土砂災害用の実験教材を開発する。風水害の発生しやすい地形を理解する教材を開発する。これらを利用して、科学的に認識ができる防災訓練プログラムを考案し、協力学校での実践で使ってもらうことを予定している。また学校での通学路の安全マップも作成する。
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Research Products
(1 results)