2017 Fiscal Year Research-status Report
アートマネジメント人材育成における共創に向けたコミュニケーション能力の養成
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17K01112
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
志村 聖子 相愛大学, 音楽学部, 准教授 (30736765)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アートマネジメント人材育成 / アートマネジメント教育 / コミュニケーション能力 / 芸術教育 / 学習者中心主義 / 共創に向けたコミュニケーション / ハイコンテクスト文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これからのアートマネジメント人材に求められるコミュニケーション能力の特性を抽出し、高等教育機関のアートマネジメント教育において、かかる能力を養成していくための学習環境のあり方を示すことにある。 初年度はまず、日本におけるコミュニケーションの特性を文献調査により整理し、日本語のコミュニケーションの特徴(言葉以外で伝達される情報が多い、いわゆる「ハイコンテクスト文化」)とアートマネジメントにおいて求められる「共創に向けたコミュニケーション」の関係について考察した。その上で、アートマネジメントの現場におけるコミュニケーション上の課題の現状を把握するため、現職者に対する意識調査と事例収集を行った。多くの現職者が、日常的にコミュニケーションの問題が生じていると回答した一方で、組織レベルにおいてはコミュニケーションの問題が「対処すべき重要な課題」としては十分に認識されていない実態があることが推察された。 次に、アートマネジメント人材に必要とされる能力が、芸術に関わることを通していかに養成されうるのかに着目した。初年度はまず、教育のあり方が「学習者中心主義」へとシフトする中で、芸術科目における学び方や求められる能力がどのように変遷しているかを、オランダの芸術教育を対象として文献調査を行った。その結果、近年の芸術教育では実践(制作、演奏)や鑑賞だけでなく、その体験を科学的に洞察し、他者に表現できることを求めるように変化していることが明らかとなった。ここから、芸術作品や芸術体験を(芸術に特有な言語・非言語を用いながら)表現する技法と、論理的に人々とディスカッションする技法のいずれにも焦点をあて、養成のあり方を探る必要があることが把握された。 以上を通じて、アートマネジメント教育におけるコミュニケーション能力養成のあり方を具体的に検討していくための基盤を形成することを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現職者に対する調査のうち、コミュニケーション上の課題に関する事例収集については、主体の属性や組織内の立場、相手との関係性、問題の受け取り方や背景など、予想以上に多様なケースが集まったことから、分析にやや時間を要しているもの、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、以下の作業を行う。 ・初年度の調査により把握できた具体事例を踏まえて、アートマネジメントの各場面で求められるコミュニケーション能力の特性や具体的内容を分析する。 ・アートマネジメント教育において、学習者のコミュニケーションを促進していくにあたっての課題や学習環境についてより具体的な検討を行う。そのためのモデル事例として、引き続きオランダの芸術教育に着目し、教育プログラムの概要や目的、実施体制、学生の参加状況や反応、実施にあたっての課題等を把握する。 以上を踏まえ、アートマネジメント教育におけるコミュニケーション能力養成のあり方についての考察を進めていく。
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