2018 Fiscal Year Research-status Report
沖積平野・海岸平野における微地形分類と自然災害との関係に関する再検討
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17K01238
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
海津 正倫 奈良大学, その他部局等, 特別研究員 (50127883)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 沖積低地 / 微地形 / 土地条件 / 自然災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には,7月に西日本各地で甚大な水害が発生したが,それらの分布と地域性を把握するために,各河川流域における洪水氾濫状況を地点別に地図(地理院地図,GoogleEarth)上に示し,日本地理学会災害対応委員会のホームページに掲載した.また,岡山県倉敷市真備町では小田川本流のみならず小田川左岸支流の末政川や馬越川の破堤により大規模な浸水被害が発生したが,本研究ではこの小田川下流低地における水害について,現地調査によって破堤地点付近における洪水流の流向について調査をおこない,低地の地形特性と水害との関係について検討した.流向の把握にあたっては民家の破壊状況や塀の倒れ方,押堀の位置及び形態などにもとづいて流れの方向を把握し,国土地理院が7月9, 11, 12日に撮影した空中写真で確認・補正を行った.また,末政川の地形的特性を把握するため,国土地理院による5mDEMを用いて,河道と河道から約25m離れた右岸および左岸の地盤高にもとづいて縦断面図を作成し,検討した. その結果,末政川の破堤が天井川化している末政川の河道特性と深く関わることが明らかになると共に,末政川と高馬川にはさまれた地域における洪水の様子は,低地面に残された流向の痕跡から推定される流れの順序,すなわち,先に高馬川および小田川の破堤によって北東方向に洪水流が流れ,そのあとで末政川右岸の破堤によって東から西に向けての洪水流が襲来したという可能性が考えられ,さらに,小田川と高馬川の洪水流がこの低地内で時計回りに回転して時間差で再度到来したという事が推定された. さらに,途上国における水害の状況と微地形との関係を把握するため,スマトラ島北西部の海岸平野における微地形と津波の浸水状況との関係についての検討を行い,現在投稿中である.そのほか,タイ王国中央平原における洪水氾濫状況と低地の地形特性の把握に関する調査を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年には各地でさまざまな自然災害が発生し,社会的にも注目を集めた.とくに,西日本災害に関しては,各地で発生した水害状況の地域性を示すために,水害タイプ別に災害発生地点を地図(地理院地図,Google Earth)上で表示することに挑戦し,日本地理学会災害対応本部のホームページで公開することができた.また,中でも著しい水害が発生した岡山県倉敷市真備町の水害に関しては,現地調査をおこない,水害の実態把握と地形環境との関係を明らかにすることができた,さらに,途上国における水害と地形環境との関係を検討するために現地調査をおこない,日本とはかなり異なる地形環境の把握について検討した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成する上では,個々の地形環境と自然災害との関係について検討するのみならず.沖積低地の地形と自然災害との関係について体系的に整理することも必要であると考え,目下そのような内容の書籍を執筆中である.その中で沖積低地のさまざまな地形についてその特性を把握するとともに,それらがいかに自然災害に対応するかなどといった点についても検討しつつある.
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