2017 Fiscal Year Research-status Report
Study on Cooperation and Collaboration System to Promote "Build Back Better"
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17K01338
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
青田 良介 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 教授 (30598107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 栄一 関西大学, 社会安全学部, 教授 (00352360)
室崎 益輝 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 教授 (90026261)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 連携 / 協働 / 自治体間支援 / 受援力 / 官民連携 / 顔の見える関係 / 連携のマニュアル化 / 役割分担 |
Outline of Annual Research Achievements |
「“行政”対“行政”(官―官)」の連携について、東日本大震災被災地である宮城県庁、気仙沼市役所、南三陸町役場、及びカウンターパート方式による支援が注目された関西広域連合(事務局:兵庫県)での調査を行った。人的支援の状況を把握すべき人事セクションにおいても、直後の混乱期は全体像が見えなかったこと、時間の経過とともに全容を把握し支援、受援の双方において取りまとめの役割を果たしたこと、その一方で、土木や保健といった専門性が必要な人材確保については、主管部局がイニシアチブを取り国の省庁等と連携せざるを得なかった実態等が明らかになった。熊本地震についても、基礎自治体の受援力が問題となり、関西広域連合が人と防災未来センター等の研究機関と一体となって、そうした自治体の本部機能を支援したことがわかった。 「“行政”対“民間”(官ー民)」の先進事例として、首都直下型地震での被害が想定される神奈川県平塚市で実施されている防災まちづくりの状況を調査した。同市内では、住民による防災グループが自治会や市役所等と連携し、避難訓練や研修等の取組に努めている。行政職員も含め、同じ市民としての長年の付き合いから、顔の見える関係が構築されていること、その上で互いに長所や弱点を認識し合っていること、来るべき首都直下型地震や旧東海地震への対策として、市役所職員が精力的に住民独自の防災活動に参加していること等が、連携の秘訣であることがわかった。 連携・協働については、米国に先進事例が多いことから、地震災害等への備えに取り組んでいるワシントン州を調査した。日本では災害後に連携を構築あるいは強化することが多いが、米国では連邦政府(FEMA)州政府、カウンティ、市役所、さらには、民間支援団体(NVOAD)が、災害前から連携方策を計画的にマニュアル化している点が顕著であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に単一自治体の人的資源に限りがあるなかで、災害時及びその後の自治体間の人的支援は不可欠な方策であると考えられる。東日本大震災を機にそうした支援が活発になる一方、将来の巨大災害に備え、どの様な点に課題があるかを明確にすることができた。また、官民連携において、基礎自治体における草の根ベースでの市民と行政との連携の取組みを把握することができた。 さらに、連携・協働の先進事例のある米国では、巨大災害に備えた事前の取組みが、計画やマニュアル等を通して、システマティックに準備されている。そうした知見は、我が国の連携・協働を考察する上で大変有用なものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
自治体間連携については、国(例:総務省)や自治体(例:関西広域連合)を中心に主に支援に関する方策が検討されている。それらが、組織や人材の充実にどう影響を及ぼすのか、さらに、どのような制度構築につながるのかを考察する。他方、支援については、それを受ける側の受援力向上も大きな課題である。特に基礎自治体では、十分な意思決定が行われない、折角の支援の人材をうまく活用できない等の問題が見られた。それらをフォローする広域自治体の役割についても検討する必要もある。被災が想定される自治体の受援力について考察する。 一方、民間組織については、東日本大震災からの教訓を契機に設立された"JVOAD, Japan Volunteer Organization Active in Disaster"が、熊本地震において"Kumamoto VOAD"を現地に作り支援活動を展開している。これらは、「③“民間”対“民間”(民-民)」はもとより、「②“行政”対“民間”(官-民)」を推進するうえでも大きな役割を担うと期待されている。活動を持続させる上で、その組織や特に資金面についてどのような課題や展望が考えられるのか調査し、考察する。 その他にも、近年、水害を中心に各地で水害等が多発していることから、それらの際に連携・協働がどのように取り組まれているのかについても調査を進める。 さらに、財源では、自治体の裁量の効きやすい復興基金や復興交付金についても、考察を深めたい。制度面では、官-民、民-民の連携を強化する法的な裏付けとして、災害対策基本法が改正されたが、その効果等についても考察する。 これらの点を踏まえ、「組織・人材」「財源」「制度」面での研究を本格化させていきたい。
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Causes of Carryover |
「組織・人材」「財源」「制度」面での研究を本格化させていく。自治体間連携については、国や都道府県ブロック会議等全国自治体の事例を調査する。一方、受援力については、南海トラフ地震が想定される徳島県等を中心に調査を進める。 民間組織については、JVOADやKVOADの事例を調査する。さらに、ボランティアセンターを運営する社会福祉協議会の状況についても調査する。その他にも、近年、水害を中心に各地で水害等が多発していることから、それらの際に連携・協働がどのように取り組まれているのかについても調査を進める。これらについては、過去の災害事例はもとより、今後災害が発生した際の連携についてもフィールド調査を行いたい。さらに、海外の事例で先進的なものがあれば、調査を行う。
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Research Products
(13 results)