2017 Fiscal Year Research-status Report
嚥下に伴う甲状腺からのホルモン分泌促進メカニズムの解明とフレイル予防への応用
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17K01550
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
堀田 晴美 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (70199511)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 咽頭 / 嚥下反射 / 甲状腺 / サイロキシン / カルシトニン / ホルモン分泌 / 上喉頭神経 / 求心性神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的: 高齢者のフレイル予防のために「口から食べる」重要性が指摘されている。しかし、その理由はよくわかっていない。嚥下を誘発する上喉頭神経の電気刺激が、甲状腺からのホルモンの分泌を促進するという現象を、私たちは最近見出した。本研究では、この成果を発展させ、口や喉からのどのような情報が、どのような神経回路や伝達物質を介して甲状腺からのホルモン分泌を促すのか、について基礎研究をおこなう。 平成29年度の成果のまとめ:咽頭の触刺激が、甲状腺からのホルモン分泌を促すこと、この反応が上喉頭神経を介する反射であることを明らかにした。 具体的内容:麻酔下、人工呼吸下の雄ラットを用いた。まず、嚥下の誘発に効果的な刺激を探索した。軟らかいバルーンを口腔から挿入して食道側へ動かすと、バルーンが咽頭部に入ることで嚥下反射が誘発された。この方法で咽頭粘膜の約1秒間の触刺激を10秒毎に与えると、刺激のたびに嚥下反射が繰り返し誘発された。そこで、この刺激を用いることにした。次に、甲状腺静脈にカテーテルを挿入して甲状腺から出る静脈血を連続的に採取し、刺激前、刺激中、刺激後におけるサイロキシンとカルシトニンの分泌速度を調べた。咽頭の触刺激中、甲状腺からのサイロキシンとカルシトニンの分泌が、刺激前に比べて有意に増加した。この反応は、上喉頭神経を両側性に切断すると、完全に消失した。上喉頭神経の求心性神経活動を電気生理学的に解析したところ、バルーンが咽頭部に入ることで神経活動が増加することが確認された。 意義:以上の研究成果は、より効果的な嚥下リハビリ方法の開発に役立ち、高齢者のフレイルを予防する新しい方法の開発につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食べ物を飲み込むときに起こるような咽頭の触刺激が、甲状腺からのホルモン分泌を促進することを明らかにすることができた。この反応は、上喉頭神経の電気刺激で誘発された反応と大きさや時間経過が同様であり、上喉頭神経の切断で消失すること、刺激中に上喉頭神経の求心性神経活動を増加することから、上喉頭神経を介する反射であることが示された。この成果は、ほぼ計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により、咽頭-甲状腺反射の求心路を明らかにした上で、翌年度には、遠心路の解析を行って、求心路と遠心路の両方を明らかにし、反射であることを確定する。また、咽頭の触刺激以外の刺激が甲状腺機能に及ぼす影響についても調べる。基本的なモデルは初年度と同様で、麻酔したラットの甲状腺静脈から血液を少量採取し、ホルモンの分泌量を直接測定する一方、電気生理学的な実験を行う。
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Causes of Carryover |
効率的に実験が進み、予定したよりも少ない動物数で当該年度の成果が得られた。翌年度の予算と合わせ、新たな研究手法を使った実験を試みるために使用する。
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