2019 Fiscal Year Research-status Report
オリンピックの臨床哲学:人間学的価値からの持続可能なオリンピックに向けて
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17K01692
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
関根 正美 日本体育大学, 体育学部, 教授 (50294393)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レガシー / オリンピックの価値教育 / より人間的な |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オリンピックの哲学的原理を確保することでオリンピックが抱える病理に対して、オリンピックが人類の知的遺産として生き続けるための現状回復への道を哲学者ハンス・レンクの「より人間的に」という思想から紡ぎ出すことを目的に開始された。 当該年度(2019年度)の実施計画は、「ドーピング」および「商業主義」という病理に対し、「より人間的な」観点からのオリンピック理念を提示することにあった。ドーピングに関しては、今年度の研究の遅れが認められ、当初の成果を上げることが出来なかった。商業主義に関しては、近年のオリンピックのレガシーから処方箋の糸口を探ることができた。オリンピックのレガシーについては開催都市にその創造が課せられるなど、オリンピックの中心価値を担うものとして位置付いている。しかし、とりわけ「都市レガシー」は都市開発と結びつき、「より人間的」な価値とは異なる点を明らかにした。現代オリンピックの商業主義という病理はレガシーによっても深くなっている。その病理を克服するために、レガシーそのものが「より人間的」でなければならない。 さらに、オリンピックの病理を克服するための具体的方策として、オリンピックの価値教育についての考察を行った。2020年の東京大会に向けても学校教育を中心にオリンピック教育が推進されているが、その限界が明らかになった。では、オリンピックの病理に対して「より人間的な」オリンピックを実現するためにはどうすれば良いか。この点を研究期間を延長して行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
東京オリンピック・パラリンピック大会の前年ということで、スポーツ庁委託事業「オリンピックパラリンピック教育全国展開事業」の中核拠点事業実施責任者として時間と労力を割かねばならず、研究活動の時間と労力を確保することができなかったため、当初の計画通りに進めることが出来なかった。ただし、計画全体に対して部分的な研究になるが、オリンピック教育に関する研究を進めることができた。これを「より人間的な」オリンピックの実践学として進めて行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
事業期間の延長が認められたので、今年度の一年を使って当初の計画通りに研究遂行を行う。「より人間的な」オリンピックという観点から、2020年東京大会の評価を踏まえて考察を行う予定であったが、2020年大会そのものが2021年度に延期になったため、最終的な結果ではなくこれまでの経緯を含めて「より人間的な」オリンピク構想であったかの評価を行う。その歳の評価方法はドーピングについては、勝利至上主義と関連させ、競技者の人生の観点からオリンピックにおけるドーピング禁止理由を探る。また、商業主義についてはオリンピック憲章と関連させ、オリンピックレガシーの分析と大会の持続可能について、2020年東京大会関係の文書を分析しつつ考察を進める。観点としてはクーベルタンのオリンピックの理念とレンクの「より人間的」の双方の観点から考察を行う。
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Causes of Carryover |
2020年オリンピック東京大会に関係したスポーツ庁委託事業ならびに学内附置機関オリンピックスポーツ文化研究所の業務に費やさざるを得ないエフォートが大きくなったため、本研究課題のための研究遂行が計画より遅れることとなった。そのために期間延長を行う。使用計画としては、昨年度謝金・人件費を使っていないので、研究補助のための謝金・人件費を使用して研究遂行を円滑に進める。
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Research Products
(1 results)